恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
ただの同僚でいるために
真城さんへの微妙な想いを封印し、彼の相棒としてのポジションを確固たるものにするため、私は連休明けからこれまで以上に仕事に没頭した。
ただし、体調管理を怠るとまた彼に迷惑をかけることになるので、ダラダラと残業するようなことはせず、時間内で最大限の仕事ができるよう心掛ける。
無駄な時間を作らなければ、ちょっとした雑談をすることもない。真城さんにプライベートの話をされないようにするための、私なりの防御策でもあった。
彼は時折なにか言いたそうにするけれど、気づいていないふりを貫いて一週間。
真城さんもそろそろ諦めてくれるだろうと信じ、ビジネスライクな対応を続けている。
「神崎さん、ビオワインのクレーム処理の件だけど」
「すでに対応済みです。あとは部長のチェックが通り次第、報告書を全体に共有します」
パソコンの画面に報告書を出して彼に見せると、真城さんは上から下までざっと目で追った。
「早いね……」
「ありがとうございます。それとご相談なんですが、複数の販売店から日本製ワインオープナーの問い合わせが来ているんです。私はこれまで食品そのものしか扱ってこなかったので、コネクションが全くなくて……真城さんはどうですか?」