恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる

 部長から個人的なお話?

 気にはなるものの、さすがに盗み聞きはできない。

 しばらくその場で待っていると、真城さんは数分ですぐに戻って来た。

「待たせてごめん」
「いえ。なんのお話だったんですか?」
「まだ内緒。でも近いうちにわかると思う」

 曖昧な表現をされ、ますます知りたくなってしまう。表情が明るいから、なんとなくいい話のような気がする。もしかしたら彼の出世の話とか。

 だったら相棒としては、一番にお祝いしてあげたいけれど。

「……今じゃダメなんですか?」
「まだハッキリしたわけじゃないんだ。でも、いい方向にはいくと思う。……って、神崎さんにはわけがわからないよな」

 笑ってごまかすようなそぶりは、照れくささの裏返しにも見える。

 とはいえ早合点の可能性もあるので、これ以上追及するのはやめておこう。

「全然わかりませんけど、なんだかいい話のようなので、聞かせてもらえるのを楽しみにしています」
「もったいぶって悪い。神崎さんもホッとしてくれるといいんだけど。じゃ、帰ろう」

 私がホッとする……?

 なんだか予想している話と違うような気もしたが、そこで会話は途切れたので、いつか彼が話してくれる時を大人しく待つことにした。

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