恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「昨年……いえ、一昨年に製造されたものではないでしょうか?」
「すごいわ、その通りよ。あなた、ワインが好きなのね」

 よかった……。実のところ合っているかどうかの自信は五十パーセントくらいだったから、運もよかったのだろう。

 しかし、単純な感想の次は熟成期間と、どんどん求められる回答のレベルが上がっているような気がする。

 これ以上専門的な知識を問われたら、すべてに正解できる可能性は――いや、ここであきらめちゃダメだ。

 真城さんだって今頃、畑の方でニルセンさんから別の難しい試験を受けているのだ。

 彼なら絶対に合格するだろう。相棒として、足を引っ張るわけにはいかない。

 崩れそうになったメンタルを立て直したくて、グラスに残っていたワインを飲み干し、アンナさんからの次の出題を待った。

 すると、一旦席を離れていた彼女は先ほど開栓したボトルと新しいグラスをいそいそ持ってきて、テーブルを挟んで反対側のスツールに腰を下ろした。それからにっこりと目を細めて笑う。

「あなたになら、うちのワインを預けても大丈夫。素敵な出会いに感謝して、乾杯しましょう」
「えっ……?」

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