恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「あの時は女性がアクセサリーにされてしまっていたけれど、彼……真城さんのように美形の男性だと、逆のパターンもあるのかしら?」
「ノー! 彼に限ってそんなことはあり得ません! ご覧の通り彼は確かにカッコイイですけど、彼の良さは見た目だけじゃないんです。困っている人を放っておけない優しさに溢れてて、そのせいで自分が損をすることになっても、誰かを笑顔にできるなら構わないっていう、正義のヒーローみたいな人なんです」
アンナさんは話し好きで、いつの間にか私を『シノ』と呼んで慕ってくれるようになっていた。
さらに飲ませ上手で、私は試験に合格した解放感もあって、勧められるがままにワインを口に運ぶうち、仕事中にもかかわらず軽く酔ってしまっている。
「まぁ、ずいぶん褒めるのね。正義というより、まるでシノにとっての特別なヒーローみたいに聞こえるわ」
「それは……」
探るようなアンナさんの視線にたじろぎ、言葉を詰まらせる。
いくらなんでも、こんな場所で彼への恋心を認めるのはどうなんだろう。
アンナさんはいい人だけれど、ペアで出張している相手に片想い中、なんて知ったら、不真面目に仕事をしているように取られてしまいかねない。
そうなったらせっかく試験に合格したのが水の泡だ……。