恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる

「ありがとうございます。もし実際にご注文したいとなったら、その時は迅速に対応いたしますのでご相談ください」
「参ったな……。神崎さんがアンナを酔わせて、真城さんからはサプライズプレゼント。見事な連携で妻を落とされたら、私にはなすすべがありませんよ」
「私たち、別にそんなつもりは……」

 なんだかズルをして契約を勝ち取るみたいで、慌てて声を上げる。しかし、真城さんはなぜか堂々と胸を張っていた。

「お褒めに預かり恐縮です。ニルセンさんには畑でお話ししましたが、彼女は本当に唯一無二の存在なのです」

 相棒として、だよね? それ以上の意味があるわけがないのにドキドキしてしまうのは、やっぱり酔っているせいだと思う。

「……シノ、これは脈ありよ。出張中に決めちゃいなさい」

 私の耳元にずいっと顔を近づけ、ひそひそ囁いたアンナさん。彼への気持ちについては濁したままだったのに、すっかりお見通しだったらしい。

 思わず頬が熱くなるけれど、私自身、もう自分の気持ちはごまかさないと決めている。

「私、がんばります」

 アンナさんを見つめてしっかり宣言すると、彼女は笑みを深める。真城さんは内緒話をする私たちを、不思議そうに見つめていた。

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