恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
その後、ニルセンさんご夫妻と無事に契約の話を済ませることができた。ワインオープナーの注文はとりあえず保留だけれど、無事に彼らの造ったワインを納品してもらえることになり、ひと安心。
夫妻は私たちのことをすっかり気に入ってくれたらしく、ご厚意で自宅でのディナーまでご馳走になってしまった。
ニルセンさんのワインには地元のチーズがよく合い、昼間も飲んだと言うのにまたしても心地よくワインに酔い、ホテルに戻る頃にはすっかり千鳥足だった。
「ほら、着いたよ」
タクシーを降りてからずっと肩を貸してくれている真城さんが、部屋まで送ってくれた。
そっと腕をほどいてベッドに私を座らせると、手にしていたペットボトルの水を手渡してくれる。
「ありがとうございます」
受け取ってのどを潤すも、思考や体はなんだかふわふわしたままだ。
無事に契約を取れてホッとしているとはいえ、明日も仕事なのにこの体たらく。
真城さんも呆れているに違いない。彼も同じくらい飲んでいるはずなのに、まったく酔っている様子がないから。
「すみません、ご迷惑おかけしました。明日までにはなんとかお酒を抜きますので」
座ったまま膝を揃え、深く頭を下げた。