恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「ああ。きみが恐怖に耐えている最中に、許可も得ず自分の欲を押しつけるような真似をしたことは本当に申し訳なかった。ただ……中途半端な気持ちだったわけじゃないってことだけは言っておく。きみを抱きしめてキスしたいと思った、その感情に嘘はない」
「真城さん……」
じゃあ、彼が『ごめん』と言ったのは――気持ちがこもってないどころかその逆で、溢れる感情のまま行動してしまった自分への反省と、私を気遣う優しさから出た言葉ってこと……?
トクンと胸が鳴って、頬にじわじわ熱が集まる。
しばらく沈黙が続いた後で、真城さんが顔をしかめてため息をついた。
「……って、またこれだ。きみと話をするのは出張が終わってからって約束なのに、部屋まで送った勢いで……今の、もう完全に告白だったな」
照れた顔で髪をかき上げる彼にこちらまで恥ずかしくなったけれど、こんな時まで〝いい人〟を貫く彼が微笑ましくもあった。
でも、決して彼を馬鹿にしているわけじゃない。私は何度もその優しさに救われたし、心を動かされた。
そんなあなただから、こんなにも惹かれた。
「……許可は、いりませんでしたよ」
私はベッドから立ち上がり、彼のそばに歩み寄る。
あの夜、私が彼の気持ちを誤解していたのと同じように、彼もまた私の気持ちを誤解している。
それを伝えるのは、今しかないと思った。