恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「明日も頑張りましょうね、昴矢さん」
彼の腕の中でそっと顔を上げ、目を見つめて告げる。昴矢さんは蕩けそうな笑顔を浮かべた後、私を抱きしめる腕にギュッと力をこめた。
「あー、今俺、どんな難しい仕事もサクサクこなせる自信ある」
「仕事ならいつも完璧にこなしてるじゃないですか」
「出たな、営業トーク」
「真城さ……じゃなかった、昴矢さんのがうつりました」
「俺はいつも本気だって」
抱き合ってクスクス笑い合うだけで、びっくりするくらいの幸福で胸がいっぱいになった。
お互いにまだ決定的なひと言は口にしていなくても、気持ちが重なり合っているのがわかる。
今の私たちの関係に名前を与えるなら、相棒以上、恋人未満といったところだろうか。それも出張の間だけで、日本に帰ればもっと彼との距離は近くなるだろう。
これまでの恋愛に失敗が多い私としては、不安が少しもないと言ったら嘘になる。
けれど、昴矢さんとなら手を取り合って前に進んでいける気がする。
彼との穏やかな抱擁に酔いしれながら、私の胸はそんな期待で満ちていた。