恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる

 市街地の酒販店やレストランを訪問した三日目の仕事も大きなトラブルはなく、二泊四日の出張もあっという間に全日程を終えた。

 飛行機が羽田に到着するのが夕方になるため、会社への報告は翌日でいいと言われている。

 空港からは真城さんとマンションまで一緒に帰ればいいだけだ。

「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」
「はい」

 搭乗手続きを終え、コペンハーゲン空港からの離陸を待つ機内。隣り合う飛行機の座席で、昴矢さんがふと話しかけてきた。

「いくら出張帰りとはいえ、羽田についたらもうプライベートも同然だよな」
「……はい。大丈夫だと思います。どこか寄りたい場所でもあるんですか?」
「そうじゃなくて。いつも思ってたけど、こういう時のきみって鈍いよな」
「えっ?」

 意味が分からずきょとんとしていると、昴矢さんが苦笑しながら私を見る。

「出張が終わったらちゃんと話す約束だろ。その〝終わり〟って、厳密に言うといつだろうと思って。さすがに空の上じゃ落ち着かないから、羽田に着いたあと時間をもらえる?」

 改めてそう言われると、なんともくすぐったい気分になる。

 お互いなんとなく相思相愛だとはわかっていても、ちゃんとした言葉では伝えていない。ようやく素直になる時が来たのだ。

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