恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「そ、そうでしたね……! 私は、大丈夫です!」
急に緊張してしまいガチガチになりながら返事をしたら、昴矢さんがおかしそうにクスッと笑う。
「なんだかいつもの志乃に戻っちゃったな。おとといの夜は大胆だったのに」
「あれはお酒の力もありましたから……」
「朝電話を掛けた時もまだ少しアルコールの影響が残ってただろ。ふにゃふにゃしてかわいかった」
「わ、忘れてください……!」
約束通り彼がモーニングコールをしてくれた時、かろうじて電話には出たものの、半分夢の中にいるような状態だった。
まぶたを閉じたまま、スマホから聞こえてくる昴矢さんの穏やかな声を聞いているのが心地よくて、また更に眠たくなって、受け答えもかなり危なっかしかったようだ。
『早く起きないと、部屋まで寝顔を見に行くぞ』
電話口の昴矢さんは冗談のつもりでそう言ったのに、私ときたらなぜか嬉しそうに笑ったらしい。
『いいですよ。一緒に寝ましょう』
本気で寝ぼけていたのだろう。いくら思い出そうとしてもそんなことを口にした記憶はないのだが、昴矢さんはあまりに無防備な私が心配になったそうだ。
その後自力で目覚めた私と朝食をともにしている時に、苦笑しながら教えてくれた。
『本当は一緒に寝たかったよ』と、甘い本音を添えて。