恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる

「こんな風に、素顔のきみが見られることがうれしい。やっと心から甘えてもらえる存在になれたんだって、そんな気がして」
「昴矢さん……」

 愛情深いセリフに私の方こそ彼が愛おしくなって、自分からそっと触れるだけのキスをする。

 甘い視線が絡んで、今度は彼の方から何度も口づけを降らせ、シーツの上でギュッとお互いの手を握り合うと、私たちはひとつになった。

 彼の温もりに全身を包まれる幸福に、目の端からつうっと涙がこぼれる。

「……ごめん、痛い?」

 涙に気づいた彼が、指先でそっと濡れた目尻を拭う。

 こんな時でも優しい彼に、恋情が募っていく。

「違います。あまりに幸せなのと……昴矢さんのこと、好きすぎて」

 微笑みを浮かべて素直にそう伝えると、昴矢さんが困ったように笑う。

「そんなこと言われたら、優しく抱けなくなるだろ」
「大丈夫です。……昴矢さんになら、どんな風にされても」
「光栄だけど、今日は大切に抱くって約束だから。志乃には無理させない。ゆっくり、丁寧に愛させて」 
「昴矢さ――あ、ん……」

 どこまでも深い愛を感じる彼の行為は、激しいそれよりむしろ甘く官能的で、体中が彼の色に染まっていくような感覚に恍惚となる。

 昴矢さんと一緒にいれば、きっと私が長年抱えていたコンプレックスも、ゆっくり溶けてなくなっていくのだろう。

 彼の優しさに心も体も癒されたその夜、天にも昇りそうな快楽の狭間で、私はそんなことを思った。

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