恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
考えれば考えるほど昴矢さんの愛情の深さに胸が震えて、瞳が潤んだ。
彼が小さく息を吸い、少しの緊張を滲ませて口を開く。
「人生で一番の相棒になってほしいんだ。他でもない、きみに」
それは私にとって、最高のプロポーズの言葉だった。
心の奥からあふれだす熱い感情でなにも言えなくなって、たまらず彼の胸にギュッと縋りつく。
優しく抱きしめ返してくれる昴矢さんを見上げ、涙を浮かべながら、私は微笑んだ。
「ありがとうございます。私も、ずっとあなたの隣で人生を歩みたい」
「ああ。一緒に歩いていこう。志乃が疲れたら、俺がおぶってやるから」
結局一度も彼の背中におぶってもらったことはないのに、昴矢さんはどうもそのネタが好きなようだ。思わずクスクス笑ってしまう。
「大丈夫ですよ。ランニングで鍛えてますから」
「じゃあ、雷が鳴った時は?」
私の雷嫌いは相変わらずだった。昴矢さんが家にいればすぐに私の部屋まで駆けつけてくれるので、心細さはだいぶましになったように思う。
とはいえ彼ナシで耐えられるようになるまでは、まだ時間がかかりそうだ。
「……その時は、こうして抱きしめてください」
「もちろん。約束だ」
昴矢さんは、こうして私が素直な気持ちをさらけ出せる唯一の人。彼を失うことなんて絶対に考えられない。
それからしばらくふたりの世界に浸ってしまったけれど、そのうちすれ違う人々の視線に気づき、急に恥ずかしくなる。
そそくさと体を離して駅までの道を急ぎ、もっと堂々と愛し合うため、私たちのマンションへと帰った。