恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「いや~、よかったよ。志乃姉が幸せになってくれて」
「志乃姉、しっかりしすぎだから貰い手があるか心配だったもんな。もうちょっとこう、要領よく生きればいいのにと昔から思ってたし」
結婚式場であるホテルの親族控室で、ふたりの弟が好き勝手なことを言っている。
ホッと息をついた方がすぐ下の弟、大志。自分も独身なのに余計な発言が多いのは末弟の勇志だ。
私がこういう性格になった一因は、あなたたちにもあるのよ!
そう怒鳴りたい気持ちもあるが、今日はなにも言うまい。なにせ、今の私は純白のウエディングドレスに身を包んだしとやかな花嫁なのだ。
王道のAラインドレスは、すっきりと肩を出したビスチェタイプ。優しい暖色系でまとめてもらったラウンドブーケを持ち、ブーケに使われているのと同じ生花を、ハーフアップにした髪に飾っている。
昴矢さんにプロポーズされた夏の夜から、およそ一年と二カ月。
あれから同棲を初めて順調に愛を育んできた私たちは、穏やかな秋の日にとうとうこの晴れの日を迎えた。