恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「お義姉さん、それにお義父さんとお義母さんも、こっち向いてくださーい」
正面で、スマホを片手に合図しているのは、大志の妻である千笑(ちえみ)ちゃん。
今日は大志と一緒に参列してくれていて、持ち前の明るさで神崎家の控室を盛り上げてくれている。
顔を合わせて早々に『結婚祝いも兼ねて、またお揃いのルームウエア買っちゃいました!』と紙袋を手渡され、また猫耳じゃないでしょうね……?と思いつつ、まだ中身を確認できていないところだ。
千笑ちゃんに一枚両親との写真を撮ってもらった後、ホテルのスタッフにカメラマンを頼んで、弟たちと千笑ちゃんも含めた家族六人での撮影。
そうこうしているうちに、支度を済ませた昴矢さんが挨拶にやってきて、今度は彼とふたりで真城家の控室へ挨拶に向かう。
ホテルの廊下をふたりで歩いていると、嬉しさと気恥ずかしさでなんだか妙にソワソワした。
昴矢さんのタキシード姿があまりに素敵すぎるせいもあると思う。
シルバーのジャケットに黒のベストとタイを合わせ、髪はきっちりオールバックに撫でつけられているきっちりとした正装。
凛とした横顔には、家でも会社でも見たことのない、気品と風格があった。