恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「真城さん、こんばんは」
鉢合わせた彼は、ノーネクタイのシャツにスラックス。彼もこれからコンビニにでも出向くのかもしれない。
「今帰り……なわけないか。なんか雰囲気違うし」
「えっ? あっ……もう、最悪です。ランニング帰りよりさらにひどい姿で会っちゃうなんて」
シャワーの後だし、コンビニに行くだけだからと思って、私は完全なる部屋着姿。
パーカータイプの白いワンピースなのだが、フードに猫耳がついているから人前で着たことはなかったのに……。
「そういうの、好きなんだ。意外」
上から下までじっくりと観察した真城さんが、そう言って目を丸くしている。
あまり見られたくないからフードで顔を隠したいのに、猫耳のせいでファンシーな見た目になるのが不本意で、俯くしかない。
「ご、誤解です。この服、弟のお嫁さんが『お義姉さんとお揃いとか憧れなんです!』ってプレゼントしてくれたものなので、自分の趣味ではないのに捨てられなくて」
「なるほど。ちゃんと着てあげるところが神崎さんらしい」
信じてもらえてホッとする。
五歳下の義理の妹にこの服を貰った当時、『これ、お義姉さんに』とはにかみながら渡されてかなりキュンとした反面、袋を開けた瞬間一瞬固まってしまった。
もちろんすぐに笑顔を取り繕い、喜んだふりをしたけれど。