恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
エリートな彼の意外な一面
新年度。数名の新入社員に交じって、私も海外営業部という新たな環境での挑戦が始まった。
国内営業部では扱う商品ごとに分かれていたチームが、海外営業部では担当地域ごとに組まれ、年度ごとに編成が変わるらしい。
その発表が異動初日の朝礼であると言うので、私はいったい誰とどこを担当するのだろうと、期待に胸を高鳴らせていたのだけれど。
「神崎さんは、真城くんと組んで北ヨーロッパ地域を担当してください」
いつも通り穏やかな調子の浅井部長にそう言われ、「えっ」と小声が漏れてしまった。
決して嫌というわけではない。しかし、どうして最近こうも頻繁に彼と縁があるのだろう。
マンションの部屋は隣同士、同じ会社の同じ部署で、チームまで同じになってしまうなんて。しかも三、四人で組んでいるチームもある中で私たちはふたり組。
これからは真城さんとバディの関係になるってことだ。一緒に過ごす時間も格段に増える。
「改めてよろしく、神崎さん。北欧は以前も担当したことがあるけど、基本的に英語が通じる地域だから、やりやすいと思うよ」
朝礼の後、さっそく真城さんが歩み寄ってきて挨拶してくれる。
しばし呆然としていた私は、慌ててぺこりと頭を下げた。どう考えても新参者の私から挨拶するべきだったのに、いきなり後れを取ってしまった。