恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「いえ、私なら大丈夫ですから、真城さんはみんなと楽しんでください」
「気にするなよ。もともと早く帰るつもりだったんだ」
いや、そういうことを言っているわけでは……。
困惑して目を瞬かせていると、針ヶ谷さんがずいっと割り込んでくる。
そしてさりげなく顎を動かし、殺気立った女性陣の方を示した。
「お前が帰ったら、あいつらの相手は誰がするんだよ。神崎のことなら俺が送る」
「いいんだ。俺が送った方が効率的だし」
「……効率的?」
針ヶ谷さんが片眉を上げて不思議そうな顔をする。
真城さん、なにを言おうとしているの……?
なんとなくいやな予感がするも、口を挟むことはできふたりを交互に見つめる。
「俺たち、同じマンションに帰るから」
「はっ?」
針ヶ谷さんが呆けた声を出した直後、前方の女性陣の方から悲鳴のような声が漏れる。
ちょっと待って、真城さん。それは言わない約束だったのでは?
彼の発言を引っ込めることはできないが、説明不足も甚だしい。私はすかさず補足をするべく口を開く。
「ち、違いますよ。あの、建物としてのマンションって意味で、部屋自体はもう全くの別々で、近所づきあいもとくには――」
「でも、同じ洗剤で服を洗う仲だよな?」
えっ? 洗剤……?