恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
レストランを出ると、真城さんが予告していた通りに彼と一緒に帰ることになった。
二次会へ向かうメンバーと別れ、駅へと向かう。
先ほどのネガティブ発言以降なんとなく気まずい空気が続いていて、ふたりとも無言で繁華街の夜道を歩き、電車に乗った後も近くにいるだけでとくに会話はなかった。
真城さんがようやく口を開いたのは、マンションに到着し彼の部屋の前で別れる時だった。
おやすみなさいくらいは言おうと彼を見上げたら、真剣な眼差しとぶつかった。
「神崎さん」
「は、はい」
なんとなくシリアスな空気を感じて、微かに緊張が走る。真城さんは一瞬目を伏せてなにか考えるそぶりをした後、再び私を真っすぐに見つめた。
「今度、個人的に食事に誘ってもいい?」
なにを言われたのかわからず、一瞬フリーズする。彼を見つめたままただゆっくり瞬きをしていたら、真城さんの手がそっと、私の片手を取って握った。
「迷惑だったら言って。でも、きみとふたりで会いたいんだ」
ストレートなセリフに、ようやく脳が状況を理解する。
頬がみるみる熱を持ち、心臓が激しく脈打った。