恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
真城さんは嘘や冗談で言っている雰囲気ではない。私もちゃんと返事をしないと。
……でも、どう言えばいいの?
こういう場面が久しぶりすぎて、正しい選択がまったくわからない。
とにかく恥ずかしくていっぱいいっぱいで、手に触れられているくすぐったさに耐えるのもそろそろ限界で、私はパッと彼の手をほどくと言い放った。
「ど、同僚としてなら!」
そして真城さんの反応も見ず、逃げるように自分の部屋まで駆け出す。
「神崎さん……!」
私を引き留める彼の声も耳に届いてはいたけれど、応えられる余裕がなかった。
焦って玄関の鍵を開けるのに手間取ったけれど、ようやく自分の家に入れると気が抜けて、ドアに背を預けたままずるずるとその場に座り込む。
私……間違ってないよね。
真城さんのことは尊敬できる先輩だし、優しい性格にも好感を持っているし、時折見せる男性的な魅力にドキドキしてしまうこともあるけれど……私、恋愛向きの女じゃないもの。
自分を正当化しようと色々と理屈をこねている間も、激しく鳴り続ける心臓の音でどうにかなりそうだった。