恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「そんなもの、使った本人に片付けさせるべきだ。きみは見取り図だけ作って、あとは国内営業部のメンバーに任せればよかったんだ。いくら部長の命だからって、なんでも引き受けたら自分の仕事にだって響く。部長はきみが断れない性格だと言うのを知っていてつい頼んだんだろうけど……海外営業部の忙しさを知っている上司のやることじゃないよ。折を見て、俺が抗議しておく」
「すみません、私、また迷惑を……」
似たようなセリフを、さっきも聞いた気がする。
神崎さんはどこまでも人に頼ることが苦手らしい。俺は自分の意思で部長に抗議しようと思っただけなのに、意気消沈してうなだれてしまった。
「仲間を守るのはあたり前だ。だから、もし逆の立場になったら今度は神崎さんが俺を助けてくれればいい。そうすれば、お互い様だろ」
いくら『甘えて』と言っても、彼女の性格で素直にそうするのはきっと難しい。
だったら、持ちつ持たれつ、俺たちの関係は対等だと伝えた方が、彼女の心には響くのではないだろうか。
俺の方が年上だとか、先輩だとか、そういうことは関係なく、困ったときは支え合う関係。無条件に甘やかすより、そんな自立した付き合いの方が、彼女は心をゆるしてくれるような気がするのだ。