恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
曖昧な口づけの理由
体調を崩した後、すぐに大型連休がやってきたのは私にとっては幸運だった。
うちの会社はカレンダー通りの休日なので合間に出勤する日もあったけれど、平日は無理なく仕事をして、休日はあまり家から出ずのんびり過ごし、ランニングも自重した。
しかし、時間があればあるほど余計なことを考えてしまい、体はすっかり回復したものの心の方がどうにも不調だった。
連休最終日となった祝日の火曜、家にあるもので適当に昼食を済ませた後、自室のベッドにごろんと横になる。
見つめた先は真城さんの部屋がある方の壁だ。
『仲間を守るのはあたり前だ。だから、もし逆の立場になったら今度は神崎さんが俺を助けてくれればいい。そうすれば、お互い様だろ』
近寄りがたいエリートだと思っていた頃も彼はキラキラしていたけれど、今はまた違った理由で、その姿が眩しく見える。
いつだって荷物を全部ひとりで抱えようとする私を助けてくれて、だけどその優しさは決して押しつけがましいものではなくて。
私が間違っていれば本気で怒って、正しい道へと導いてくれる。