恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
子どもの頃、夜になって熱を出した幼い弟たちを母が病院に連れて行くことがあった。
母は私も連れて行くか悩んでいたが、父が仕事から間もなく帰れそうだったこともあり、少しの間だけ私をひとりで留守番させることに。
当時の私はたぶん六歳くらいだったと思う。もうすぐ一年生になるから、一人で留守番をするくらい大丈夫。そう大見得を切って三人を送り出した。
しかし、自分以外誰もいない家で過ごすのは思った以上に心細く、父が帰ってくるまでの時間が幼い私には永遠のようにも感じられた。
やっぱり病院について行くんだった……。わずか十分ほどで、さっそく後悔し始めていたその時。
寂しさですっかり縮こまった私の心に追い打ちをかけるように、突然大きな雷の音が鳴り響いたのである。おまけに近くで落雷があったらしく、家じゅうの電気がふっと消えてしまった。
恐怖が限界を超え、今まで瞳の中に留めていた涙が、ぶわっとあふれ出す。
『こわいよぉ……おとうさん、おかあさぁん』
真っ暗な部屋の中で、思い切り泣き叫んだ。このまま闇の中にいたら、お化けにでも食べられてしまうような気がした。
電気は数分で復旧し、それとほぼ同時に父が帰宅してわんわん泣く私を抱きしめてくれたのだが、ひとりぼっちの時に落雷と停電に見舞われたショックが消えることはなかった。