恋する花束を君に
「はぁ、、、やっと出来た。」
ポスターのデータが出来上がったのは、定時の15分前だった。
しかし、これで終わりではない。
これから印刷して、各店舗に発送出来るように準備もしなくてはいけないのだ。
わたしの周りでは、もう定時15分前ということもあり、帰る準備を始める人も居た。
絵里は帰り支度をしながら、「なごみ、残業?」と言い、苦笑いを浮かべていた。
「残業でーす。」
「お疲れ様ですなぁ〜。」
「まぁ、あと印刷して送る準備するだけだから。」
そうして、定時きっかりになると、みんなぞろぞろと退勤して行く。
絵里と由美子が「お疲れ〜!」と帰って行く後ろでは、わたしから隠れるように帰って行く航太の姿が見えた。
商品の写真データの送信が遅れ、わたしが残業になったことに顔を合わせるのが気まずいのだろう。
「さて、やるか。」
わたしが印刷の準備をするために椅子から立ち上がると、後ろから「お疲れ様です。」という声が聞こえた。
振り向くと、そこには薗田さんが立っていた。
「あ、薗田さん。お疲れ様です。」
「残業ですか?」
「はい、これから印刷して店舗に送る準備が残ってて。」
わたしがそう言うと、薗田さんは「俺、手伝いますよ?」と言った。
「えっ?」
「1人でやるより、2人でやった方が少しでも早く終わるじゃないですか。」
いつも定時きっかりに帰る薗田さんが、手伝ってくれる?
わたしはあまりの驚きに言葉が出て来なかった。