恋する花束を君に

「え!いや!そんな!」
「気にしないでください。これから帰ったって、吉◯屋で牛丼食べて、帰って風呂入って寝るだけですから。」

薗田さんはそう言うと、「で、俺は何したらいいですか?」と続けた。

「あ、えっと、じゃあ、わたしが印刷したポスターを袋に入れるので、それを閉じて、店舗名が書いてあるシール貼ってもらっていいですか?」

わたしが身振り手振りをしながら説明すると、薗田さんは「了解。」と言って、作業スペースの椅子に座った。

「薗田さんって、牛丼食べるんですね。意外!」
「そうですか?」
「しかも、吉◯屋!やっぱり牛丼食べるなら、吉◯屋ですよね!わたしもなんです!周りは、松◯派が多くて。」
「そうなんですね。何か、俺ら飲食の好み似てますね。」

そんなことを話しながら、わたしは印刷機から出てくるポスターを振り分け、袋に入れると、薗田さんに渡していった。

すると、薗田さんが急に袋を閉じ、シールを貼りながら「こないだ、三崎さんが自分の話をしてくれたので、今日は俺の話をしますね。」と言い出した。

わたしは驚き、「え?わたしに話してくれるんですか?」と言った。

薗田さんは、「三崎さんになら、話してもいいかなぁって。かっこ悪い話ですけど、聞いてくれます?」と言い、わたしは大きく頷くと「どんな話でも聞きます!」と答えた。

「俺、実は、5年前に婚約破棄されてるんです。3年付き合った婚約者に。理由は、俺が"好き"だとか、"愛してる"だとか、愛情表現が足りないからだと言われました。愛情表現が豊かな人が現れて、そっちの人と一緒になりたいから、婚約の話はなかったことにしてくれって、、、まぁ、浮気してたんでしょうね。」

薗田さんはそう言い、その時の事を思い出すように切なそうに笑うと、「恋愛って難しいですよね。」と独り言のように呟いた。

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