恋する花束を君に
「はぁ?お前、薗田だっけ?お前には関係ないだろ。」
航太はそう言い、薗田さんを睨み付けた。
しかし、薗田さんの冷静でクールな表情は変わらない。
「確かに俺には関係ないかもしれませんが、三崎さんは明らかに嫌がっています。嫌がる女性を無理矢理自分のものにしようとするなんて、男としてカッコ悪いと思いませんか?こちらも聞きたくなくても聞こえてくる会話を聞いていて、不快だったので。」
薗田さんはそう言うと、表情一つ変えず「では、失礼します。」と言い、自分が座っていた席へ戻って行った。
航太は「何だあいつ。」と薗田さんを睨みつけると、悔しそうにわたしを離してくれた。
ナルシストの航太は、"カッコ悪い"という言葉に弱いのだ。
薗田さん、わたしを助けてくれた?
みんな見て見ぬ振りする中、いつも一人で揉め事が苦手そうなのに、わざわざ注意しに来てくれた。
わたしは、自分のレモンサワーを手に持つと、「薗田さんにお礼行ってくる!」と席を立った。
「お、おい!なごみ!」
わたしを引き止める航太の声なんて聞こえない。
薗田さんはテーブルの一番端の方で胡座をかき、一人で飲んでいた。
わたしはそっと薗田さんに近付くと、「あのぉ、、、。」と声を掛けた。
すると、薗田さんは少し驚いた表情でこちらを向いた。
「お隣、いいですか?」
わたしがそう訊くと、薗田さんは「あ、あぁ、はい。どうぞ。」と言ってくれ、わたしは「失礼します。」と薗田さんの隣に座った。