恋する花束を君に

「助けていただいて、ありがとうございます。」

わたしがそう言うと、「そんな、助けただなんて大したことしてないですよ。」と薗田さんは謙虚に言った。

「あ、薗田さん、何飲んでるんですか？」

ビールのジョッキではないグラスを見て、わたしは訊いた。

「レモンサワーです。」
「あ、わたしと一緒！」
「どうも、ビールが苦手で。」
「わたしもです。あの苦いのが、美味しいと思えなくて。」
「ですよね。」

普段無口な薗田さんが普通に話してくれている。

わたしは、そのことが嬉しかった。

「三崎さん、俺なんかと居て大丈夫ですか？」
「えっ？」
「俺みたいな無口で誰も寄せ付けないような変な奴と一緒に居たら、三崎さんまで勘違いされてしまいますよ。」

薗田さんはそう言うと、微かな苦笑いを浮かべた。

「大丈夫です。ここに来たのは、薗田さんにお礼を言いたかったのはもちろんなんですけど、薗田さんとお話をしてみたかったからもあるので。」
「えっ、俺とですか？」
「はい。何かこう言うと、失礼かもしれないんですけど、わたしたち同じニオイがするなって思って。」

わたしがそう言うと、薗田さんは不思議そうな表情を浮かべ、「同じニオイ？」と訊いた。