恋は復讐の後で
「ラリカ皇后陛下なのですか? 私、陛下の遺体を盗んで魔術を完成させのです。魔術に使った遺体の主も回帰前の記憶を引き継いでいると言う事でしょうか?」
「そのようですね⋯⋯」
「納得がいきました。ラリカ皇后はいつもダニエル・ガレリーナといる時、上の空でしたから。ナタリア様、後悔していたのでしょう? マテリオ皇子殿下と離れていたことを」
きっと今、一番辛いのは禁忌を犯してまで求めた愛する人を失ったリオナ様だ。それなのに彼女は私の手をそっと握り慰めてくれる。
彼女の魔術で回帰しているのが事実だとしても、私はナタリアと回帰する前に槇原美香子として人生を送った。
(リオナ様が『トゥルーエンディング』の脚本家だったりする? 内容的に彼女が書いたとは思えないけれど⋯⋯)
「私は公爵位を継げるようにします。そして、マテリオ皇子殿下の支援に回るつもりです。ナタリア様は先程、養子の話をされていたようですがいかがされるおつもりですか?」
「私はロピアン侯爵家の養子にはなりません。あれは私を侯爵家の養子にして、ダニエルと縁を結ぼうという企みです」
「成程、おそらくナタリア様がお話を断れば、ダニエル皇子は他国の王女か私に声を掛けてくるでしょうね」
確かに妃教育を終えているリオナ様は適格者だろう。
「そこまで予想されているのですね」
「予想して危険を察知し守りを固めていたとしても⋯⋯それでも1度の読み間違いで全てを失います。結果が全てです。私はオスカーを守れませんでした。それでも、彼の意志は絶対に守り抜きます」
これ程、強く真っ直ぐな女性を私は見たことがなかった。
そして、私も彼女のように強くなりたいと思った。
「私、やっぱり養子の話を受けます」
ロピアン侯爵も私にとって死ぬ程、憎い相手だ。
でも、聖女の力があっても平民のままでは、この貴族社会では相手にされない。
リオナ様のように一途に愛する人の為に戦いたい。
それだけでは足りなくて、私は私を虐げ利用した人間全てに復讐したかった。
私は彼女のように清らかで一途な令嬢ではなく、ネガティブで陰湿な女だ。
私は今度こそ私らしい方法で、復讐を遂げてマテリオと幸せになりたいと思った。
「その場合、ダニエル皇子との婚約が必ずセットになりますが、それも受け入れるおつもりですか?」
「えっ?」
確かに貴族の結婚は当人同士の意志より、家同士の政略的なものだ。
(ダニエルと結婚? あの地獄をまた味わうの? マテリオから離れて?)
「ロピアン侯爵は10年以上もダニエル皇子殿下の支援をしています。お互い離れられないくらいの後ろ暗い秘密も握り合っているはずです。復讐の為に愛する方と別の道を選ぶのですか?」
どうやら私が復讐に囚われている事を彼女には見抜かれていたらしい。
しかしながら、ロピアン侯爵に復讐をするには、彼の懐に飛び込んだ方が良い気がする。
何を言って良いか分からず戸惑っていると、柔らかな表情でリオナ様が徐に口を開いた。
「私の義妹になると言うのは、どうでしょうか? ヨーカー公爵家の養女になり、マテリオ皇子殿下との婚約を結ぶのです」
突然の提案に驚きを隠せない。
マテリオには他国の王女との婚約話があると噂があった。
彼が他の女を愛おしそうに見つめる事なんて私には耐えられそうもない。
もし、ヨーカー公爵家の養女になり公爵令嬢としてマテリオと婚約できるならこれ以上の話はない。
それに、私に義妹にならないかと提案してくれる彼女と姉妹になって見たかった。
エステルは私を使用人のように扱ったし、槇原美香子は1人っ子だった。
「あの⋯⋯私のように復讐に囚われて、道を踏みはずしてばかりの人間が妹でも良いのですか? それに大罪人の娘です⋯⋯」
「私は親の罪が子に及ぶとは考えておりません。父も同じです。あなたは、あなたですよ、ナタリア。それに、私も間違ってばかりの女です。足りないところを補いあえる姉妹になれば良いのではないですか? 復讐に囚われても、それがあなたの全てはではないでしょう? 教えてください。ナタリアはどのような女性なのですか?」
穏やかな声で私の事を教えて欲しいと彼女は言った。
大罪人の娘、娼婦の娘というレッテルを貼られて、私の事を知りたいなどと言ってくれる令嬢はいなかった。
「キノコが好きです。敬愛しています。宜しくお願いします。お姉様」
半ば興奮気味に早口で捲し立ててしまい失敗したと思ったが、彼女が微笑ましそうに頷いてくれたのでホッとした。
「そのようですね⋯⋯」
「納得がいきました。ラリカ皇后はいつもダニエル・ガレリーナといる時、上の空でしたから。ナタリア様、後悔していたのでしょう? マテリオ皇子殿下と離れていたことを」
きっと今、一番辛いのは禁忌を犯してまで求めた愛する人を失ったリオナ様だ。それなのに彼女は私の手をそっと握り慰めてくれる。
彼女の魔術で回帰しているのが事実だとしても、私はナタリアと回帰する前に槇原美香子として人生を送った。
(リオナ様が『トゥルーエンディング』の脚本家だったりする? 内容的に彼女が書いたとは思えないけれど⋯⋯)
「私は公爵位を継げるようにします。そして、マテリオ皇子殿下の支援に回るつもりです。ナタリア様は先程、養子の話をされていたようですがいかがされるおつもりですか?」
「私はロピアン侯爵家の養子にはなりません。あれは私を侯爵家の養子にして、ダニエルと縁を結ぼうという企みです」
「成程、おそらくナタリア様がお話を断れば、ダニエル皇子は他国の王女か私に声を掛けてくるでしょうね」
確かに妃教育を終えているリオナ様は適格者だろう。
「そこまで予想されているのですね」
「予想して危険を察知し守りを固めていたとしても⋯⋯それでも1度の読み間違いで全てを失います。結果が全てです。私はオスカーを守れませんでした。それでも、彼の意志は絶対に守り抜きます」
これ程、強く真っ直ぐな女性を私は見たことがなかった。
そして、私も彼女のように強くなりたいと思った。
「私、やっぱり養子の話を受けます」
ロピアン侯爵も私にとって死ぬ程、憎い相手だ。
でも、聖女の力があっても平民のままでは、この貴族社会では相手にされない。
リオナ様のように一途に愛する人の為に戦いたい。
それだけでは足りなくて、私は私を虐げ利用した人間全てに復讐したかった。
私は彼女のように清らかで一途な令嬢ではなく、ネガティブで陰湿な女だ。
私は今度こそ私らしい方法で、復讐を遂げてマテリオと幸せになりたいと思った。
「その場合、ダニエル皇子との婚約が必ずセットになりますが、それも受け入れるおつもりですか?」
「えっ?」
確かに貴族の結婚は当人同士の意志より、家同士の政略的なものだ。
(ダニエルと結婚? あの地獄をまた味わうの? マテリオから離れて?)
「ロピアン侯爵は10年以上もダニエル皇子殿下の支援をしています。お互い離れられないくらいの後ろ暗い秘密も握り合っているはずです。復讐の為に愛する方と別の道を選ぶのですか?」
どうやら私が復讐に囚われている事を彼女には見抜かれていたらしい。
しかしながら、ロピアン侯爵に復讐をするには、彼の懐に飛び込んだ方が良い気がする。
何を言って良いか分からず戸惑っていると、柔らかな表情でリオナ様が徐に口を開いた。
「私の義妹になると言うのは、どうでしょうか? ヨーカー公爵家の養女になり、マテリオ皇子殿下との婚約を結ぶのです」
突然の提案に驚きを隠せない。
マテリオには他国の王女との婚約話があると噂があった。
彼が他の女を愛おしそうに見つめる事なんて私には耐えられそうもない。
もし、ヨーカー公爵家の養女になり公爵令嬢としてマテリオと婚約できるならこれ以上の話はない。
それに、私に義妹にならないかと提案してくれる彼女と姉妹になって見たかった。
エステルは私を使用人のように扱ったし、槇原美香子は1人っ子だった。
「あの⋯⋯私のように復讐に囚われて、道を踏みはずしてばかりの人間が妹でも良いのですか? それに大罪人の娘です⋯⋯」
「私は親の罪が子に及ぶとは考えておりません。父も同じです。あなたは、あなたですよ、ナタリア。それに、私も間違ってばかりの女です。足りないところを補いあえる姉妹になれば良いのではないですか? 復讐に囚われても、それがあなたの全てはではないでしょう? 教えてください。ナタリアはどのような女性なのですか?」
穏やかな声で私の事を教えて欲しいと彼女は言った。
大罪人の娘、娼婦の娘というレッテルを貼られて、私の事を知りたいなどと言ってくれる令嬢はいなかった。
「キノコが好きです。敬愛しています。宜しくお願いします。お姉様」
半ば興奮気味に早口で捲し立ててしまい失敗したと思ったが、彼女が微笑ましそうに頷いてくれたのでホッとした。