恋は復讐の後で
彼女はとても演技が上手で、僕を好きなのかと錯覚させられた。
ナタリアにあれ程まで尽くしたマテリオを捨てて、僕のところに来たと勘違いさせ僕は暴走した。
10年以上も僕に尽くしたエステルを断罪した時はそれなりに非難されたし、妃教育を一切していないラリカを皇后にする事には反発もあった。
僕は心からナタリアに惚れていたから、彼女のことを最優先してきた。
結局、高杉智也として97年も生きたのに、僕はナタリアという女に縛られている。
マテリオより先に彼女と出会うことには失敗した。
ナタリアも過去の僕との結婚の記憶があるとすれば僕を避けるかもしれない。でも、僕は今度こそ彼女とやり直したいと思っていた。
プライドが邪魔してかけてあげられなかった愛の言葉を今度こそ彼女に伝える。100年近く彼女を思い続けて生きてきた。マテリオより僕の方が優れているのだから、きっと僕が本気になれば彼女の心を手に入れられる。
ナタリアはロピアン侯爵の養女になる件に難色を示していた。
(平民では僕と結婚できないではないか!)
その時、ノックと共に補佐官からヨーカー公爵の来訪が告げられた。
ヨーカー公爵はオスカー側の人間なので僕に会いにくる事は珍しい。
「アンドレア・ヨーカーが、ダニエル・ガレリーナ皇子殿下にお目にかかります」
濃紺の髪に灰色の瞳、見た目こそ地味だが彼はかなりのやり手だ。
「公爵、そなたが僕を訪ねてくるなんて珍しいな」
「実は、この度、娘を新たに迎えることになりまして。さあ、ナタリア、殿下にご挨拶しなさい」
公爵が扉の方に声を掛けると、ノックと共に扉を開けたのは僕が求め続けたナタリアだった。
(娘?)
「ダニエル・ガレリーナ皇子殿下にナタリア・ヨーカーがお目にかかります」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
「ナ、ナタリア?」
気の抜けたような声が思わず出る。
行政部の首長であるアンドレア・ヨーカー公爵は彼女の父親であるルミエーラ子爵に散々迷惑を掛けられたはずだ。
(いくら、聖女でもナタリアを養子にとる判断をするか?)
「失礼致します。ダニエル皇子殿下は美しい女性がお好きなようで、私のような地味な令嬢は目に入らないのでしょうか?」
ふと聞きなれた声がして、ナタリアの隣に侍女のようについている女性と目が合った。
(リオナ・ヨーカー!)
美貌のヨーカー夫人に似ず、地味な女だが1番危険な女だ。
彼女は前世でナタリアの遺体を生贄して時を戻した女でもある。
そして、術者である彼女は当然のように前世の記憶を持っているはずだ。
「時を戻す魔術」は禁忌とされ1度限りしか発動しないとされる。
しかし、「生贄」ではなく「遺体」で時を戻せた事で、もしかして2度目も可能なのではないかと彼女は考えているのかもしれない。
(オスカーがまた死んだからな⋯⋯)
珍しく警戒心の強いナタリアがリオナ嬢を慕うような目で見つめている。
(ナタリアが危ない! また、リオナ嬢は何かをする気だ!)
あらゆる禁忌の魔術で生贄とされる聖女の肉体。
僕はナタリアをリオナ嬢に人質に取られた事に気がついた。
ナタリアにあれ程まで尽くしたマテリオを捨てて、僕のところに来たと勘違いさせ僕は暴走した。
10年以上も僕に尽くしたエステルを断罪した時はそれなりに非難されたし、妃教育を一切していないラリカを皇后にする事には反発もあった。
僕は心からナタリアに惚れていたから、彼女のことを最優先してきた。
結局、高杉智也として97年も生きたのに、僕はナタリアという女に縛られている。
マテリオより先に彼女と出会うことには失敗した。
ナタリアも過去の僕との結婚の記憶があるとすれば僕を避けるかもしれない。でも、僕は今度こそ彼女とやり直したいと思っていた。
プライドが邪魔してかけてあげられなかった愛の言葉を今度こそ彼女に伝える。100年近く彼女を思い続けて生きてきた。マテリオより僕の方が優れているのだから、きっと僕が本気になれば彼女の心を手に入れられる。
ナタリアはロピアン侯爵の養女になる件に難色を示していた。
(平民では僕と結婚できないではないか!)
その時、ノックと共に補佐官からヨーカー公爵の来訪が告げられた。
ヨーカー公爵はオスカー側の人間なので僕に会いにくる事は珍しい。
「アンドレア・ヨーカーが、ダニエル・ガレリーナ皇子殿下にお目にかかります」
濃紺の髪に灰色の瞳、見た目こそ地味だが彼はかなりのやり手だ。
「公爵、そなたが僕を訪ねてくるなんて珍しいな」
「実は、この度、娘を新たに迎えることになりまして。さあ、ナタリア、殿下にご挨拶しなさい」
公爵が扉の方に声を掛けると、ノックと共に扉を開けたのは僕が求め続けたナタリアだった。
(娘?)
「ダニエル・ガレリーナ皇子殿下にナタリア・ヨーカーがお目にかかります」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
「ナ、ナタリア?」
気の抜けたような声が思わず出る。
行政部の首長であるアンドレア・ヨーカー公爵は彼女の父親であるルミエーラ子爵に散々迷惑を掛けられたはずだ。
(いくら、聖女でもナタリアを養子にとる判断をするか?)
「失礼致します。ダニエル皇子殿下は美しい女性がお好きなようで、私のような地味な令嬢は目に入らないのでしょうか?」
ふと聞きなれた声がして、ナタリアの隣に侍女のようについている女性と目が合った。
(リオナ・ヨーカー!)
美貌のヨーカー夫人に似ず、地味な女だが1番危険な女だ。
彼女は前世でナタリアの遺体を生贄して時を戻した女でもある。
そして、術者である彼女は当然のように前世の記憶を持っているはずだ。
「時を戻す魔術」は禁忌とされ1度限りしか発動しないとされる。
しかし、「生贄」ではなく「遺体」で時を戻せた事で、もしかして2度目も可能なのではないかと彼女は考えているのかもしれない。
(オスカーがまた死んだからな⋯⋯)
珍しく警戒心の強いナタリアがリオナ嬢を慕うような目で見つめている。
(ナタリアが危ない! また、リオナ嬢は何かをする気だ!)
あらゆる禁忌の魔術で生贄とされる聖女の肉体。
僕はナタリアをリオナ嬢に人質に取られた事に気がついた。