恋は復讐の後で
「帝国の太陽マテリオ・ガレリーナ、このナタリア・ヨーカーを妻とし、病める時も、健やかな時も、貧しい時も、豊かな時も、喜びあっても、悲しみあっても、死が2人を分つまで愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約の元に、誓いますか?」

 神父がゆっくりと誓いの言葉を読み上げる。

「はい、誓います」

 大好きなマテリオが幸せそうに笑っている。
 彼の顔が一瞬、過去に結婚した時のダニエルの顔と重なった。
(ダニエル⋯⋯あの表情も演技だったの? 色恋営業?)

 彼が私を好きなフリをする理由なんてあっただろうか。
(色恋営業していたのは私だ⋯⋯)
 何だか胸がざわつくけれど、そのような私の気持ちを察するようにマテリオが手を握ってきた。
 いつもより高めの彼の体温に緊張する。
 私は最初からマテリオのことだけを見つめていたのに、復讐に囚われ彼を裏切った。
 
 ネガティブで陰湿な私だけれど、彼のことだけは裏切らず大切にしよう。
 
 
「ナタリア・ヨーカー、この帝国の太陽マテリオ・ガレリーナ、病める時も、健やかな時も、貧しい時も、豊かな時も、喜びあっても、悲しみあっても、死が2人を分つまで愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約の元に、誓いますか?」

「はい、誓います。私は彼だけを愛しています」
 
 予定にない私の言葉に周囲がざわめくのが分かる。
自分がホストにされて嫌だった、人の心を弄ぶような行為を私はしていた。
マテリオのことしか愛せない自分を自覚しながら、ダニエルを愛しているフリをした。もしかしたら、ダニエルを沢山傷つけたかもしれない。

 「では、誓いの口づけを⋯⋯」

 神父の言葉にマテリオが私のベールを捲る。
 彼のルビーのような瞳と目が合って、顔が近付いてくる。
 唇が触れた瞬間、もう、自分の心を裏切らずマテリオを愛し抜く事を誓った。
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