翠くんは今日もつれない【完】
「羽依ちゃん、ホテル行こっか。」

「いや、です、誰か、、誰か、助けて…!」



絶対に連れて行かれるもんか、と行き交う通行人に向けて、助けを求めるように必死に叫ぶ。


だけど、、


誰も彼も遠巻きにこちらの様子を伺うか、迷惑そうにあたしを一瞥するばかりで、あたしを助けようとする人は一向に現れることはなかった。


ああ、、それも、そうか。

好き好んで面倒事に関わりたい人なんているわけないもんね。


誰にも助けて貰えないと悟れば、もう、絶望するしかなかった。



「安心してよ、羽依ちゃん。今度は妻にバレないように気をつけるからさ。」



どうして、、あたしは一時期でもこんな最低な人間のことなんか好きになってしまったんだろう。


全部、全部、自業自得。

あたしがこの男の本性を見抜けなかったせい。

自分の愚かさが招いた災いの種だ。


もう、いい。もういいや。

どうせ、今、彼氏いないし、好きな人もいないし。それにあたし、処女ってわけじゃないからそこまで大事にする必要もないし。


なんかもう全てがどうでもよくなって、諦めるように抵抗する力を緩めて、大人しく黛さんについて行こうとした時、、



「あんたってやっぱ馬鹿だろ。簡単に諦めてんじゃねーよ」
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