翠くんは今日もつれない【完】
あの子の声が聞こえた気がして足を止める。
これはきっと、幻聴だ。だって、真面目な彼がこんな時間にこんなところにいるわけないもん。
あたしの想像の中でもあの子は、ぶっきらぼうで、生意気で、可愛くなくて、、
でも、その声に、その言葉に、堕ちていこうとしていたあたしの心は掬い上げられて「離してください!」とありったけの力を振り絞って黛さんの手を振り払った。
だけど、黛さんがあたしを簡単に逃がしてくれるわけなくて「っ、!羽依!いい加減に、」距離を取るため後退ったあたしを再び捕らえようと黛さんの手が伸ばされて身構える。
───その、瞬間だった。
「嫌がってる人に無理強いをするのは良くないと思いますよ。」
抑揚のない淡々とした声が聞こえたと共に黛さんからあたしを守るように立ち塞がる広い背中に思わず目を見開いて驚いた。
「翠、くん」
ああ、、あの声は幻聴なんかじゃなかったんだ。
これはきっと、幻聴だ。だって、真面目な彼がこんな時間にこんなところにいるわけないもん。
あたしの想像の中でもあの子は、ぶっきらぼうで、生意気で、可愛くなくて、、
でも、その声に、その言葉に、堕ちていこうとしていたあたしの心は掬い上げられて「離してください!」とありったけの力を振り絞って黛さんの手を振り払った。
だけど、黛さんがあたしを簡単に逃がしてくれるわけなくて「っ、!羽依!いい加減に、」距離を取るため後退ったあたしを再び捕らえようと黛さんの手が伸ばされて身構える。
───その、瞬間だった。
「嫌がってる人に無理強いをするのは良くないと思いますよ。」
抑揚のない淡々とした声が聞こえたと共に黛さんからあたしを守るように立ち塞がる広い背中に思わず目を見開いて驚いた。
「翠、くん」
ああ、、あの声は幻聴なんかじゃなかったんだ。