翠くんは今日もつれない【完】
ねぇ、翠くん。

どうして、こんなところにいるの?

高校生が夜中の歓楽街に出歩いているのがバレたら怒られちゃうよ?

おばさん達もきっと心配してるよ?


年上として翠くんに言わなきゃいけないことは沢山あるはずなのに、、翠くんが助けにきてくれて嬉しいだなんて思ってしまった。



「はあ?関係ねぇ奴は引っ込んでろよ」



邪魔されてイライラしてるのか黛さんはいつものように人の良さそうな柔和な微笑みを浮かべることを忘れて、自分の目の前に立つ翠くんに対して高圧的な態度をとる。

怒気を孕んでより一層低くなった声に、翠くん越しに聞いてても身体が震えた。


翠くんは大丈夫なのだろうか、と見上げると、ちょうど、翠くんもあたしの方を振り返っていて、ヘーゼル色の瞳と視線が交わる。


そして、怯えるあたしを安心させるかのように翠くんの瞳が優しく細められたかと思えば



「関係ありますよ」



あたしの肩をそっと抱き寄せて、ふわり、翠くんのいい匂いが身体を包み込んだ。
< 29 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop