翠くんは今日もつれない【完】
( Side:碧心 )




「おかえり、すーくん」



にっこりと笑みを浮かべて、帰宅したばかりの弟を出迎えた。弟の翠は玄関先で待ち構える私の姿を目にした途端「げっ」と隠すことなく嫌そうに顔を顰める。


姉の私に対してそんな態度を取るなんて、、

全く、失礼な弟だ。


だけど「……ただいま、姉さん」と嫌な顔はしつつも、ちゃんと返してくれる当たり、翠は根っからのいい子ちゃんなんだよね。



「じゃあ、」

「まあ、待ちなよ。翠」



逃げるように自分の部屋に戻ろうとする翠の肩を掴んで引き止めると「何」迷惑そうな顔が振り返る。私はそんな翠に更に笑みを深めて「羽依、大丈夫だった?」こてん、小首を傾げて疑問を投げかけた。



「……なんのこと?俺はコンビニ行ってただけだし」

「あら。すーくんってば、お姉ちゃんに嘘吐いても無駄って知ってるくせに」



全部分かってるんだから、と暗に匂わせると翠は観念したように、はあっと深い溜息を吐いた。



「……コンビニ行く途中で、元カレにホテル連れ込まれそうになってた羽依さんをたまたま見掛けたから助けて家まで送って来たけど、それがなに。」

「ふぅん。たまたま、ね?」



嘘吐け、と思った。
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