翠くんは今日もつれない【完】
☽꙳⋆
「ねぇ、碧心りん。」
私達に撫で回されてボサボサになった頭を整えながら部屋に戻って行く翠の背中を見送っていると隣に立つ兄に呼ばれて「ん?」と短く返事をする。
すると、突然、美緑に顔を覗き込まれて肩を小さく跳ねた。
「少し、気になることがあるんだけど。」
「……何?」
「碧心りんってひとの恋路に口挟むようなタイプじゃないでしょ。例え、それが弟でも。だから今回やけにお節介焼いてるの不思議だなーって思って。」
色素の薄い双眸が私の心の中さえも見透かしてくるように細められる。どうしてこの男は、何も考えてなさそうでいい加減に見えるのに、こうも目敏いのか。
「別に?ただ、翠が何年も羽依に片思いしてるの知ってたし。あの子って不器用なところあるでしょ。だから、姉として可愛い弟に協力してあげようと思っただけ」
「ふーん?」
「……それに、もし、叶う可能性のある恋なら諦めて欲しくなかったの。」
なるほどね、と納得したように呟くと美緑は私の頭をポンポンと撫でて「碧心はいいお姉ちゃんだな」と綺麗に口角を上げた。
「じゃあ、碧心に好きなやつできたらお兄ちゃんが一番に応援してやるから、絶対言えよ?」
私にとって、吉野美緑は酷く残酷な男だ。
きっとこの言葉も兄としての優しさからでたもので、本人に悪気はないことは分かっている。
だけど、、美緑は知らないんだ。
美緑が私を“妹”として扱う度に、私は死にたくて死にたくて堪らなくなるということを。
美緑は何も悪くない。
私がおかしいんだ。私が変なんだ。
「うん。その時は、しっかり応援してよね。“お兄ちゃん”。」
にっこり、いつものように笑う。目敏い美緑にこの気持ちを決して知られないように。悟られないように。
ああ。翠のこと嘘吐きって言っちゃったけど、一番の嘘吐きは私の方か。
「ねぇ、碧心りん。」
私達に撫で回されてボサボサになった頭を整えながら部屋に戻って行く翠の背中を見送っていると隣に立つ兄に呼ばれて「ん?」と短く返事をする。
すると、突然、美緑に顔を覗き込まれて肩を小さく跳ねた。
「少し、気になることがあるんだけど。」
「……何?」
「碧心りんってひとの恋路に口挟むようなタイプじゃないでしょ。例え、それが弟でも。だから今回やけにお節介焼いてるの不思議だなーって思って。」
色素の薄い双眸が私の心の中さえも見透かしてくるように細められる。どうしてこの男は、何も考えてなさそうでいい加減に見えるのに、こうも目敏いのか。
「別に?ただ、翠が何年も羽依に片思いしてるの知ってたし。あの子って不器用なところあるでしょ。だから、姉として可愛い弟に協力してあげようと思っただけ」
「ふーん?」
「……それに、もし、叶う可能性のある恋なら諦めて欲しくなかったの。」
なるほどね、と納得したように呟くと美緑は私の頭をポンポンと撫でて「碧心はいいお姉ちゃんだな」と綺麗に口角を上げた。
「じゃあ、碧心に好きなやつできたらお兄ちゃんが一番に応援してやるから、絶対言えよ?」
私にとって、吉野美緑は酷く残酷な男だ。
きっとこの言葉も兄としての優しさからでたもので、本人に悪気はないことは分かっている。
だけど、、美緑は知らないんだ。
美緑が私を“妹”として扱う度に、私は死にたくて死にたくて堪らなくなるということを。
美緑は何も悪くない。
私がおかしいんだ。私が変なんだ。
「うん。その時は、しっかり応援してよね。“お兄ちゃん”。」
にっこり、いつものように笑う。目敏い美緑にこの気持ちを決して知られないように。悟られないように。
ああ。翠のこと嘘吐きって言っちゃったけど、一番の嘘吐きは私の方か。