翠くんは今日もつれない【完】

Episode.3











「───本日はバレンタインだね…。」



テーブルの上で頬杖をついて、物憂げに呟く碧心。そんな碧心の姿に目を丸くして、アイスコーヒーを飲んでいたストローから口を離すと「…も、もしかして、碧心さん、誰か渡す相手がいらっしゃる?」と恐る恐る尋ねた。


すると、向かい側の席に座る碧心はビー玉のようなキラキラした瞳をゆっくりとこちらへと向けると桜色に染まった唇を意味ありげにニヤリと持ち上げていて、、

ゴクリ、あたしは唾を飲み込む。







「まさか。いるわけないでしょ。そもそも、そんな相手いたらバレンタイン当日に羽依とデートなんかしてないよ」



肩を竦めて否定する碧心に「だよね〜」と落胆気味に頷く。

ついにあの碧心にも恋のお相手の出現か!?と、ほんのすこーし、期待してしまったんだけど、、見事に打ち砕かれてしまった。残念。



「じゃあ、なんであんな物憂げに『バレンタインだね…』なんて呟いてたわけ?」



どうやら恋バナではないらしい内容に若干興味は薄れつつも、首を傾げて尋ねると、碧心は深刻そうに深い溜息を零す。
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