翠くんは今日もつれない【完】
「うちの兄と弟のことなんだけど」

「あー、美緑くんと翠くん?」

「兄弟の私が言うのもなんだけど、あの二人って無駄に顔が良いでしょ?」

「うんうん、確かにあの二人はかなり顔が良い」

「だからあいつら、まあ、、馬鹿みたいにモテるわけ。で、毎年、毎年、バレンタインの度に尋常じゃない量のチョコを持って帰ってくるから、私達はこの日がくる度に大量のチョコの消費に追われなきゃいけないのよ…」



考えるだけで鬱になりそうだわ、と碧心は顎の下で手を組みながら遠い目をする。

あー、だから碧心ってば、毎年のようにバレンタインのプレゼントとか言ってあたしに紙袋いっぱいのチョコを押し付けてくるんだな。まぁ、美味しく頂いてるから全然いいんだけどさ。


あ、でも、そうか、、



「翠くん、そんなにチョコ貰うならあたしからのなんかいらないか…」



と、ぽつり、呟く。数日前に元カレから助けて貰ったお礼も込めて、翠くんが小さい頃、好きだって言ってくれていたフォンダンショコラを作ってきたんだけど、、もっと別のものを用意してくれば良かったな、と考えていたところで。


あたしの思考を遮るようにバンっ!と勢いよくテーブルを叩きつけて碧心が立ち上がる。



「いやいやいや!いる!いるから!翠は羽依からのチョコ、絶対欲しいと思う!!」

「えー…、そんなことは…」



ないんじゃ、と否定するよりも早く碧心がスマホを取り出して「私が翠のこと呼び出すから必ず渡すのよ」と電話をかけ始めて、、


「翠!今日の午後17時に○○公園に来て!もし来なかったらあんた、ぜーったいに後悔するんだからねっ!!」と一方的に言い終えると電話を切っていた。


いやいや、後悔するって言い過ぎなのでは…?
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