翠くんは今日もつれない【完】
突然、背後から声がして振り返ると遠くにいたはずの翠くんが立っていて、、



「う、え!?す、翠くん!?いつのまに!??」



と、驚きで声を上げる。それが思った以上に大きくなってしまって、、しまった、と口元を塞ぐけど、既に手遅れで。翠くんは不機嫌そうに眉間に皺を寄せていた。



「ねぇ。うるさいんだけど。」

「ご、ごめん…」



怒られてしまって肩を落としてしょげていると翠くんは深い溜息を吐いて「もう、いいよ。別に。」と素っ気なく呟いた。


なんて言うか、、

どっちが年上なのか分からないよね、これ。


大人な対応をする翠くんに年上としての自信をなくして余計落ち込んだ。すると、いきなり翠くんに「それより、」と顔を覗き込まれて、びっくりして肩を揺らす。


え、なに…。



「隠れて盗み聞きするとか、あんた相当趣味悪いよ。」

「えっ!?ち、ちがうの、これは…!えっと、」



翠くんにあらぬ疑いを掛けられてしまって慌てて弁明しようとするけど。何を言っても、言い訳がましく聞こえてしまいそうで口篭った。

どう返答しよう、と困っていると、不意に翠くんの白魚のように長い指があたしの髪を一束掬い上げる。


そして、、



「でも、残念だったね。あんたがどこに隠れようが俺はすぐ見つけられるから」



翠くんは無表情だった顔にニヤリと不敵な笑みを浮かべると、掬い上げた髪へ、ちゅっとリップ音を立てながら口付けを落とした。
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