翠くんは今日もつれない【完】
「一途、すぎる。一途すぎるよ、翠くんは。もっと、、周り見なよ。あたしより素敵な子なんていっぱいいるのに、」

「はあ、、まだそんなこと言ってんの。無理だよ。あんた以上に好きになれる人なんて、絶対にいないから」



あたしの最後の抵抗は、キッパリと否定されてしまった。翠くんはあたしのことを本気で諦めるつもりはないみたいで。


どうしたもんか、と眉を下げて困り果てていると、、



「別に困らせるつもりはなかったけど、俺のせいで困ってる羽依さんを見るのも楽しいね」



くるくると長い指であたしの髪を巻き付けて遊ばせながら綺麗に口角を上げる。



「可愛い」

「っ、」



ねぇ、翠くん。

あたし、さっきから心臓の音がうるさいの。それこそ、翠くんにまで聞こえちゃいそうなくらいに。


あんなに真っ直ぐに『好きだ』と伝えられて、少しも揺らがない人間なんていないと思う。特にあたしなんて、少し言い寄られただけですぐその気になってしまうようなチョロい女だから、揺らいでしまいそうになる。



だけど、駄目だ。翠くんは駄目だ。


どうでもいい人間相手なら『好きって言ってくれてるし試しに付き合ってみようか』なんて軽い気持ちで付き合えた。でも、翠くんは違う。どうでもいい相手なんかじゃない。
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