翠くんは今日もつれない【完】
𖤐·̩͙




───「……それで、帰るの遅くなると思う」



微睡みの意識の中、遠くの方で声が聞こえた。それはとても耳触りのいい声で聞いてるだけで不思議と心が落ち着いた。



───「うん、うん。病院にはちゃんと行ってたみたいだから、それは大丈夫そう」



声の主は誰かと話してるみたいだ。

誰と話してるんだろう、と確認しようとするけど、瞼を開けることができない。


あたしの意思は起きたがってるのに、瞼も、身体も、全然言うことを聞いてくれなくて、、思い通りにならない窮屈さに「ううっ、」と小さく呻き声を上げた。



───「羽依さん」



すると、あたしを呼ぶ声と共に、頭を撫でられる。優しい声に、優しい手つきだった。


あ。これは、翠くんだ。


何故だか分からないけど、そう確信した。



───「まだ辛いだろ。起きるまで傍にいるから…、もう少し寝てなよ」



起きるまで傍にいる、、だなんて、翠くんってば優しいじゃん。じゃあ、お言葉に甘えてもう少し寝てようかな…。


口も動かなさそうだから、心の中で翠くんに返事をして、再び深い眠りについた。
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