翠くんは今日もつれない【完】
サラッと言われた言葉に、思わず飲んでいたスポドリを吹き出してしまった。

そんなあたしに翠くんは呆れた顔を向けて「何してんの、あんたは…」とため息を吐くとローテーブルの上に置かれた箱の中からティッシュを何枚か乱雑に抜き取ってあたしの口元に当てる。


熱のせいでそれどころじゃなかったけど、、あたし、翠くんに告白されてたんだった。





しかも、あの時、翠くんにキスされて、



「ねぇ、あんた。また顔赤くなってるけど、大丈夫?」



ぼーっとしていたあたしの鼓膜に翠くんの声が届いて、ハッと意識が呼び戻された。

すると、ビー玉のようなヘーゼル色の瞳が、すぐ近くでキラキラと煌めく。熱のせいで脳の処理が追いついてなくて、この状況を理解するのがワンテンポ遅れてしまったけど。


翠くんの大きな掌があたしの前髪を持ち上げていて、こつんと、あたしのおでこと翠くんのおでこが合わせていた。


顔が、、顔が、凄く近い。



「なんか、さっきよりも熱くなってる気が、」


「ひょあっ、!!!」

「は、」



びっくりして後ろに身体を仰け反らせると、咄嗟にあたしを支えようとした翠くんごとバランスを崩してベットに倒れ込んだ。



「───っ、」



ふにっと、唇に柔らかいものが触れる。


それは、翠くんの唇で───…。
< 62 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop