翠くんは今日もつれない【完】




「じゃあ、俺はもう帰るから」



スニーカーを履いて振り返ると、ほんのり顔を上気させた羽依さんが「すいくん。きょうは、ありがとね」と柔らかく微笑んだ。

熱のせいで上手く呂律が回らないみたいで、舌っ足らずな感じが凄く可愛かった。






「───くしゅんっ、」



なるほど、、

羽依さんはくしゃみまでも可愛いのか。



「ちゃんと暖かくして寝ろよ」

「うーん」



肩からズレ落ちていたベージュのカーディガンを元の位置まで直すと、着崩されたパジャマから伸びる白い首筋が、嫌でも目に入った。

前々から思ってたけど、この人、隙だらけと言うか、無防備過ぎると言うか。


あんたがそんなんだから、元カレにホテルに連れ込まれそうになるし、、

俺みたいなのに、付け込まれるんだよ。
< 79 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop