翠くんは今日もつれない【完】

Episode.6












「緊急事態です。碧心さん」
「なんでしょう。羽依さん」


「デートに着ていく服が決まりませんっ!!!」



深刻な面持ちで告げると碧心は「へー」と興味なさそうに相槌を打った。そして、傍らに置いていた紙袋の中から徐ろにドーナツを取り出すと、パクっと一口頬張る。


あ。いいな、それ。ミスドの新作ドーナツ。

あたしも食べたいな、、じゃなくてっ!!!



「真面目に聞けよ〜!」



肩を掴んで前後にぶんぶんと揺さぶるけど、それでも気にせずドーナツを頬張り続ける碧心。

なんたる食い意地。

ようやくドーナツを食べ終わると、紙ナプキンで口元を拭きながら一言。



「適当でよくない?」

「よくないのっ」



全然、よくない。よくないよ。

だって、だって、相手は───。



「相手は翠くんなんだよ!」

「それは知っているわ」

「あの顔面国宝の隣を適当な格好で歩けるわけないでしょっ」
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