翠くんは今日もつれない【完】
「ふぅん。で、それだけ?」

「、え?」

「それだけなの?適当が嫌な理由は」



碧心はローテーブルの上で頬杖をつくと、こてんと可愛らしく小首を傾げて「まさかそんなつまらない理由のために朝っぱらからこの私を呼び出したんじゃないでしょうね」と完璧な笑顔を浮かべる。

これは誤魔化せないな、と思った。



「……えっと、、えっとね、、どうやら、あたし、翠くんに可愛いって思われたいみたいで、」

「……」

「碧心は翠くんの姉だし、翠くんの好みとか分かるかなって、、それで、あたし、碧心に協力してほしいの、」



何だか急に恥ずかしくなって真っ直ぐにあたしを見つめてくるヘーゼル色の瞳から視線を落として碧心からの返答を待っていると「なあんだ。羽依ってば、ちゃんと翠のこと意識していたのね」と安堵したような声が鼓膜を揺らした。


「えっ、」顔を上げると柔らかく細められたヘーゼル色の瞳と視線が絡み合う。



「あたし、翠くんのこと意識してるのかな、」

「意識しているから翠からの『可愛い』が欲しいんでしょ」

「っ、そう、かも」



碧心に言われて初めてあたしが翠くんのことを意識していたことに気づいた。

顔が熱くなる。そんなあたしの頬に碧心の冷たくて白い手が触れて綺麗に微笑んだ。

そう言えば、翠くんの手もこれくらい冷たかったな、と、些細な共通点を見つけただけでも、すぐに翠くんの顔が思い浮かぶあたしは、かなり彼のことを意識してるんだと思う。



「私に任せて。翠が惚れ直しちゃうくらい羽依のことを可愛くしてあげるわ」
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