翠くんは今日もつれない【完】
「あー。翠くん、また逆ナンされてるよ」
パンフレットを購入するために少しの間だけ傍を離れて戻ると、いつの間にか翠くんの隣には見知らぬ女の子が立っていて、何やら話し掛けている。
年齢は多分、翠くんと同じくらい。肩上で綺麗に切り揃えられた絹糸のような黒髪と大きな青い瞳が印象的な美少女だった。
全く油断も隙もないんだからっ。
朝と同じように逆ナン女を追っ払おうと翠くんに近付こうとした瞬間。
「───夢芽(ゆめ)、」
と。
その女の子の名前を呼ぶ翠くんの低い声が鼓膜まで届いて、あたしは思わず足を止めた。
翠くん、名前呼んでた。
しかも、呼び捨て。
あたしのことは「さん」付けで呼ぶのに。
女の子──夢芽ちゃんは翠くんが名前を呼び捨てするくらいに、親しい子なんだろう。
よくよく見てみれば、ふたりとも楽しそうに話してるし。無表情がデフォルトの翠くんも夢芽ちゃんに対して時折、笑顔を浮かべてるし。
「なんか、めちゃくちゃお似合いじゃん。」
パンフレットを購入するために少しの間だけ傍を離れて戻ると、いつの間にか翠くんの隣には見知らぬ女の子が立っていて、何やら話し掛けている。
年齢は多分、翠くんと同じくらい。肩上で綺麗に切り揃えられた絹糸のような黒髪と大きな青い瞳が印象的な美少女だった。
全く油断も隙もないんだからっ。
朝と同じように逆ナン女を追っ払おうと翠くんに近付こうとした瞬間。
「───夢芽(ゆめ)、」
と。
その女の子の名前を呼ぶ翠くんの低い声が鼓膜まで届いて、あたしは思わず足を止めた。
翠くん、名前呼んでた。
しかも、呼び捨て。
あたしのことは「さん」付けで呼ぶのに。
女の子──夢芽ちゃんは翠くんが名前を呼び捨てするくらいに、親しい子なんだろう。
よくよく見てみれば、ふたりとも楽しそうに話してるし。無表情がデフォルトの翠くんも夢芽ちゃんに対して時折、笑顔を浮かべてるし。
「なんか、めちゃくちゃお似合いじゃん。」