翠くんは今日もつれない【完】
───“お似合い”だなんて。


自分が口にした言葉なのに、自分が一番ショックを受けていた。


" 綺麗な翠くんには綺麗な女の子が似合うの。 "

" あたしなんかじゃなくてさ。 "


そう思ってた、、はず、なのに…。


呆然と立ち尽くしたままのあたしの耳に「あはは」と明るい笑い声が聞こえた。

見たくないけど…でも、やっぱり気になって、ふたりの方へと視線を戻すと



「翠ってば、照れてるー」

「うるせ。」



夢芽ちゃんが翠くんを揶揄うように、つん、と人差し指で頬をついていて、仲の良さそうな光景が目に入って、じくじく、と胸が痛んだ。



「(やだな。すごくやだ。)」



あたしの心が黒く澱んでいくのが分かる。

これは紛れもない、、嫉妬、だ。





「羽依さん?」



気付けば、あたしは翠くんの目の前に立っていて、美しい硝子細工のような瞳があたしだけを写す。


それが堪らなく嬉しかった。

ずっと、ずっと、その瞳があたしだけを写してればいいのに、と思った。



「おかえり。ちゃんとパンフレット買え───」



話してる途中にも関わらず、あたしは翠くんの首に絡みついた。そして自分の方へ、ぐっ、と端正な顔を引き寄せて、そのまま唇を塞ぐと、ヘーゼル色の瞳が大きく見開かれる。



「好き」

「……、」

「好きだよ、翠くん」
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