さよならダメ恋、またきて初恋。
第3話
○回想シーン
モノローグ【渚くんがあんなことを言ってくれたおかげで】
(2話の、莉紗「紬と結城くんってどーいう関係なの⁉」渚「どういう関係に見える?」のコマ)
モノローグ【莉紗も、羽瀬くんと同じ勘違いをしてしまったみたいで――……】
(2話の、奏多「え? 二人って付き合ってるの?」のコマ)
(回想終了)
○学校 女子トイレの鏡前 (中庭でのランチの翌日 昼休み)
莉紗「紬って、いつから結城くんと付き合ってるの⁉ きっかけって何⁉」
目をキラキラさせながら興味津々で紬にたずねる莉紗。
紬「えっと……」
両手のひらを前に向けて、青い顔でたじたじとする紬。
紬・心の声『この質問、昨日の夜も電話でしてたような気がする……』
(三日月が出ている夜の窓を背景に、スマホを片耳に当てて困った顔をするデフォルメ絵の紬。スマホから莉紗の「どうなの⁉」という声は書き文字、カクカクしたふき出しで描かれる)
莉紗「いやーっ、紬にもあんなイケメンな彼氏ができるなんてねぇ……。あっ、そうだ! 今度、私と奏多カップルと、紬と結城くんカップルでWデートしよーよ!」
腕を組んでしみじみとしたかと思えば、ぱあっと弾ける笑顔でWデートを提案する、コロコロ表情を変える莉紗。
紬・心の声『私がデートしたいのは、羽瀬くんなんだけどね……。いい加減、諦めなきゃいけないのはわかってるんだけどさー……』
とほほ、と肩を落として落ち込む紬。
紬・心の声『でも、その前に。私と結城くんが付き合っているっていう誤解を解かないと』
黒背景に、顎をつまむ仕草をして、考え込む紬。
紬「あっ! あのね、莉紗っ……!」
莉紗「ん?」
思い切って切り出す紬に、きょとんとして首をかしげる莉紗。
紬「実は、私っ――……」
女子の声「楢崎さん」
ぎゅっと目をつむって打ち明けようとした紬の声にかぶさるように、紬と莉紗しかいないはずのこの場に、女子の声がする。
紬「え……?」
眉を八の字にして後ろを振り返る紬。
紬の背後にいたのは、険しい顔つきで腕組みをした、明るいベージュ色のロングヘアの派手で強気そうな美少女(紬と同じクラスの女子。以下、志倉)。
志倉「こんな所にいたんだ」
志倉は取り巻きの女子2人を左右に従えており(右:黒髪ショートヘア、左:茶髪のお団子ヘア)、3人共紬のことを睨みつけている。
モノローグ【あっ、同じクラスの――……】
紬「志倉さん、どうしたの……?」
志倉「ちょっと話したいことがあるから、ついてきてくれる?」
紬「それって、どんな……?」
志倉「いいから。ついてこいって言ってんの!」
イライラした顔で紬の腕をつかんで、ものすごい勢いでぐいっと引っ張る志倉。
だが、志倉の手首を他の手がガシッとつかんで止める。
紬「莉紗――……」
志倉の手首をつかんで止めたのは莉紗。莉紗はハッとした顔をする志倉をキッと睨みつける。
莉紗「やめて。どうせ紬にろくでもないことをするつもりでしょ」
志倉「あんたには関係ないでしょ⁉」
モノローグ【どうしよう。このままじゃ莉紗まで巻き込まれてしまう……!】
紬「莉紗、大丈夫だよ」
莉紗「紬……」
眉を八の字にして微笑む紬に、莉紗が心配そうに顔をしかめる。
紬「私のことは気にしないで。すぐに戻ってくるから」
紬はそう言って、志倉と取り巻きたちと一緒に女子トイレを出る。
○体育館裏
体育館の外壁側に縮こまる紬。向かい側に志倉と取り巻きたちの3人が仁王立ちして、紬のことを睨んでいる。
志倉「あんたさぁ、結城くんの何なの?」
モノローグ【うすうす予想はついていたけど、やっぱりこの話か……】
紬「えっと、私は渚くんの幼な……」
志倉「結城くんと付き合ってて、おこがましいと思わないの?」
モノローグ【えっ……?】
志倉に話を遮られ、眉をひそめる紬の目元アップ。
紬「どういうこと……?」
取り巻き①(黒髪ショートヘアの方)「は? しらばっくれるつもり? あんたが結城くんの女って噂が、学校中に広まってんの」
取り巻き①が腰に手を当てて、紬に冷たく睨みをきかせて吐き捨てる。
紬「えっ⁉ そうなの⁉ 知らなかった……」
取り巻き②(茶髪のお団子ヘア)「はあ⁉ とぼけないでよ!」
知らなかった新事実におどろく紬に、取り巻き②が、前のめりになってキレる。ビクッとする紬。
取り巻き②「周りに匂わせるように、結城くんを独り占めしてるくせに! 本当はあたしたちのことバカにしてるんでしょ⁉」
目尻に涙を浮かべる取り巻き②にたじたじとする紬。
モノローグ【……ヤバい】【なんとかしてでも誤解を解かないと】
紬「だから、付き合ってないって……!」
必死になって説明をしようと試みる紬。
志倉「この期に及んでまだ言い訳すんの? ああもう……、本っ当ムカつくっ……‼」
紬の頬目がけて平手打ちをしようと手を振り上げる志倉。
覚悟を決めて、目尻に涙をためながらも目をつむる紬。
紬・心の声『あれ? 痛く、ない……?』
おそるおそる目を開ける紬。視界に入ったのは、自分を守るように立ちふさがる、男子生徒の広い背中と風に揺れる黒髪。
渚「……おい」
怒りを顔ににじませる渚。
志倉&取り巻き二人が恐怖でビクッと肩を揺らす。
紬は、自分の前に立ちふさがる人物(渚)の声にハッと息を呑む。
モノローグ【渚くんだ。私を助けに来てくれたんだ――……】
頬を染めて、自分を守ろうとする渚の後ろ姿に見惚れる紬。(紬の心臓がトクン……、と高鳴る音)
渚はつかんでいた志倉の手首を払い、志倉を睨み付ける。
渚「紬にまた危害を加えるような真似をしてみろ。次はない」
そして、悔しそうに顔をしかめた志倉と、青い顔をして気まずそうな取り巻き二人の顔を、渚の肩越しから目にする。
志倉「い、行こっ……!」
そそくさとこの場から退散する志倉&取り巻き二人。
彼女たちがいなくなった直後、渚は焦ったようにバッと振り向く。
渚「紬、大丈夫か⁉」
紬「え、あ……、私は平気だよ」
必死になる渚に対し、コクコクと首を縦に振りながら答える紬。
渚「よか、った……」
ほっとして、はーっと長いため息をつく渚。
渚「志倉を止めるのが間に合わなかったら、紬が怪我していたかと思うと……」
紬「私は大丈夫だから! あと、助けてに来てくれてありがとうね」
にっこりと微笑む紬に、見惚れる渚。
紬「それにしても、よく私の居場所がわかったね」
渚「ああ、彼女が俺を呼びに来てくれたんだ。『紬を助けて』って」
渚は親指を立てると、志倉たちが去った方向とは反対の方向へくいっと向ける。
紬「へ……?」
きょとんとした紬が顔を向けると、体育館の陰から莉紗がこっちを覗いている。
莉紗「ご、ごめん。なんか出てくるタイミングが見つからなくて……」
照れながら笑う莉紗に、紬は感極まって目を潤ませる。
モノローグ【『大丈夫』って言ったのに】
紬は全速力でダッシュして莉紗に抱きつく。
紬「莉紗っ……!」
莉紗「うわあっ! 紬、どうしたの⁉」
おどろき慌てる莉紗に、紬は抱きついたままお礼を言う。
紬「ありがとう……」
モノローグ【本当にありがとう、莉紗】【莉紗が渚くんを呼んでくれたから、私は助かった】
莉紗に抱きつく紬の後ろ姿と、その斜め後ろに立つ渚の後ろ姿が引きのアングルで描かれる。
モノローグ【でも、こんな友達思いの親友の彼氏に横恋慕してるなんて】【私って、なんて最低なんだろう……】
莉紗に抱きついたまま、閉じた目から静かに涙を流す紬の顔アップ。
○教室 (放課後)
渚「紬、今度からはいざというときのために、俺が目を離さないように気をつけるから」
紬「気持ちだけで十分だよ……」
決心したようなキリッとした顔つきの渚と、苦笑いして「たはは……」と乾いた声で笑う紬。
紬・心の声『この様子じゃ、当分『私たちが付き合ってる』っていう噂は収まらないだろうなー……』
疲れをにじませたような乾いた笑みを浮かべてため息をつく紬(『時間かかりそう……』という書き文字が書かれる)。
突然、渚のスラックスのポケットにしまっていた、マナーモードにしていたスマホが震える。
渚「何だろ? ……母さん?」
スマホを取り出し、画面を操作する渚。
その様子を興味津々で見つめる紬。
渚「もしもし、どうしたの?」
スマホを耳に当て、電話に出る渚。
次の瞬間、目を見開く。
渚「えっ――⁉」
モノローグ【渚くんがあんなことを言ってくれたおかげで】
(2話の、莉紗「紬と結城くんってどーいう関係なの⁉」渚「どういう関係に見える?」のコマ)
モノローグ【莉紗も、羽瀬くんと同じ勘違いをしてしまったみたいで――……】
(2話の、奏多「え? 二人って付き合ってるの?」のコマ)
(回想終了)
○学校 女子トイレの鏡前 (中庭でのランチの翌日 昼休み)
莉紗「紬って、いつから結城くんと付き合ってるの⁉ きっかけって何⁉」
目をキラキラさせながら興味津々で紬にたずねる莉紗。
紬「えっと……」
両手のひらを前に向けて、青い顔でたじたじとする紬。
紬・心の声『この質問、昨日の夜も電話でしてたような気がする……』
(三日月が出ている夜の窓を背景に、スマホを片耳に当てて困った顔をするデフォルメ絵の紬。スマホから莉紗の「どうなの⁉」という声は書き文字、カクカクしたふき出しで描かれる)
莉紗「いやーっ、紬にもあんなイケメンな彼氏ができるなんてねぇ……。あっ、そうだ! 今度、私と奏多カップルと、紬と結城くんカップルでWデートしよーよ!」
腕を組んでしみじみとしたかと思えば、ぱあっと弾ける笑顔でWデートを提案する、コロコロ表情を変える莉紗。
紬・心の声『私がデートしたいのは、羽瀬くんなんだけどね……。いい加減、諦めなきゃいけないのはわかってるんだけどさー……』
とほほ、と肩を落として落ち込む紬。
紬・心の声『でも、その前に。私と結城くんが付き合っているっていう誤解を解かないと』
黒背景に、顎をつまむ仕草をして、考え込む紬。
紬「あっ! あのね、莉紗っ……!」
莉紗「ん?」
思い切って切り出す紬に、きょとんとして首をかしげる莉紗。
紬「実は、私っ――……」
女子の声「楢崎さん」
ぎゅっと目をつむって打ち明けようとした紬の声にかぶさるように、紬と莉紗しかいないはずのこの場に、女子の声がする。
紬「え……?」
眉を八の字にして後ろを振り返る紬。
紬の背後にいたのは、険しい顔つきで腕組みをした、明るいベージュ色のロングヘアの派手で強気そうな美少女(紬と同じクラスの女子。以下、志倉)。
志倉「こんな所にいたんだ」
志倉は取り巻きの女子2人を左右に従えており(右:黒髪ショートヘア、左:茶髪のお団子ヘア)、3人共紬のことを睨みつけている。
モノローグ【あっ、同じクラスの――……】
紬「志倉さん、どうしたの……?」
志倉「ちょっと話したいことがあるから、ついてきてくれる?」
紬「それって、どんな……?」
志倉「いいから。ついてこいって言ってんの!」
イライラした顔で紬の腕をつかんで、ものすごい勢いでぐいっと引っ張る志倉。
だが、志倉の手首を他の手がガシッとつかんで止める。
紬「莉紗――……」
志倉の手首をつかんで止めたのは莉紗。莉紗はハッとした顔をする志倉をキッと睨みつける。
莉紗「やめて。どうせ紬にろくでもないことをするつもりでしょ」
志倉「あんたには関係ないでしょ⁉」
モノローグ【どうしよう。このままじゃ莉紗まで巻き込まれてしまう……!】
紬「莉紗、大丈夫だよ」
莉紗「紬……」
眉を八の字にして微笑む紬に、莉紗が心配そうに顔をしかめる。
紬「私のことは気にしないで。すぐに戻ってくるから」
紬はそう言って、志倉と取り巻きたちと一緒に女子トイレを出る。
○体育館裏
体育館の外壁側に縮こまる紬。向かい側に志倉と取り巻きたちの3人が仁王立ちして、紬のことを睨んでいる。
志倉「あんたさぁ、結城くんの何なの?」
モノローグ【うすうす予想はついていたけど、やっぱりこの話か……】
紬「えっと、私は渚くんの幼な……」
志倉「結城くんと付き合ってて、おこがましいと思わないの?」
モノローグ【えっ……?】
志倉に話を遮られ、眉をひそめる紬の目元アップ。
紬「どういうこと……?」
取り巻き①(黒髪ショートヘアの方)「は? しらばっくれるつもり? あんたが結城くんの女って噂が、学校中に広まってんの」
取り巻き①が腰に手を当てて、紬に冷たく睨みをきかせて吐き捨てる。
紬「えっ⁉ そうなの⁉ 知らなかった……」
取り巻き②(茶髪のお団子ヘア)「はあ⁉ とぼけないでよ!」
知らなかった新事実におどろく紬に、取り巻き②が、前のめりになってキレる。ビクッとする紬。
取り巻き②「周りに匂わせるように、結城くんを独り占めしてるくせに! 本当はあたしたちのことバカにしてるんでしょ⁉」
目尻に涙を浮かべる取り巻き②にたじたじとする紬。
モノローグ【……ヤバい】【なんとかしてでも誤解を解かないと】
紬「だから、付き合ってないって……!」
必死になって説明をしようと試みる紬。
志倉「この期に及んでまだ言い訳すんの? ああもう……、本っ当ムカつくっ……‼」
紬の頬目がけて平手打ちをしようと手を振り上げる志倉。
覚悟を決めて、目尻に涙をためながらも目をつむる紬。
紬・心の声『あれ? 痛く、ない……?』
おそるおそる目を開ける紬。視界に入ったのは、自分を守るように立ちふさがる、男子生徒の広い背中と風に揺れる黒髪。
渚「……おい」
怒りを顔ににじませる渚。
志倉&取り巻き二人が恐怖でビクッと肩を揺らす。
紬は、自分の前に立ちふさがる人物(渚)の声にハッと息を呑む。
モノローグ【渚くんだ。私を助けに来てくれたんだ――……】
頬を染めて、自分を守ろうとする渚の後ろ姿に見惚れる紬。(紬の心臓がトクン……、と高鳴る音)
渚はつかんでいた志倉の手首を払い、志倉を睨み付ける。
渚「紬にまた危害を加えるような真似をしてみろ。次はない」
そして、悔しそうに顔をしかめた志倉と、青い顔をして気まずそうな取り巻き二人の顔を、渚の肩越しから目にする。
志倉「い、行こっ……!」
そそくさとこの場から退散する志倉&取り巻き二人。
彼女たちがいなくなった直後、渚は焦ったようにバッと振り向く。
渚「紬、大丈夫か⁉」
紬「え、あ……、私は平気だよ」
必死になる渚に対し、コクコクと首を縦に振りながら答える紬。
渚「よか、った……」
ほっとして、はーっと長いため息をつく渚。
渚「志倉を止めるのが間に合わなかったら、紬が怪我していたかと思うと……」
紬「私は大丈夫だから! あと、助けてに来てくれてありがとうね」
にっこりと微笑む紬に、見惚れる渚。
紬「それにしても、よく私の居場所がわかったね」
渚「ああ、彼女が俺を呼びに来てくれたんだ。『紬を助けて』って」
渚は親指を立てると、志倉たちが去った方向とは反対の方向へくいっと向ける。
紬「へ……?」
きょとんとした紬が顔を向けると、体育館の陰から莉紗がこっちを覗いている。
莉紗「ご、ごめん。なんか出てくるタイミングが見つからなくて……」
照れながら笑う莉紗に、紬は感極まって目を潤ませる。
モノローグ【『大丈夫』って言ったのに】
紬は全速力でダッシュして莉紗に抱きつく。
紬「莉紗っ……!」
莉紗「うわあっ! 紬、どうしたの⁉」
おどろき慌てる莉紗に、紬は抱きついたままお礼を言う。
紬「ありがとう……」
モノローグ【本当にありがとう、莉紗】【莉紗が渚くんを呼んでくれたから、私は助かった】
莉紗に抱きつく紬の後ろ姿と、その斜め後ろに立つ渚の後ろ姿が引きのアングルで描かれる。
モノローグ【でも、こんな友達思いの親友の彼氏に横恋慕してるなんて】【私って、なんて最低なんだろう……】
莉紗に抱きついたまま、閉じた目から静かに涙を流す紬の顔アップ。
○教室 (放課後)
渚「紬、今度からはいざというときのために、俺が目を離さないように気をつけるから」
紬「気持ちだけで十分だよ……」
決心したようなキリッとした顔つきの渚と、苦笑いして「たはは……」と乾いた声で笑う紬。
紬・心の声『この様子じゃ、当分『私たちが付き合ってる』っていう噂は収まらないだろうなー……』
疲れをにじませたような乾いた笑みを浮かべてため息をつく紬(『時間かかりそう……』という書き文字が書かれる)。
突然、渚のスラックスのポケットにしまっていた、マナーモードにしていたスマホが震える。
渚「何だろ? ……母さん?」
スマホを取り出し、画面を操作する渚。
その様子を興味津々で見つめる紬。
渚「もしもし、どうしたの?」
スマホを耳に当て、電話に出る渚。
次の瞬間、目を見開く。
渚「えっ――⁉」