さよならダメ恋、またきて初恋。

第5話

○2年B組の教室 (9月中旬 午前中)

モノローグ【9月中旬――】【この時期、私の学校では】
ホームルーム中。黒板前に立つ先生が、積に座る生徒たちに向かって声をかける。
先生「では、このクラスの出し物は、これで決定ってことで」
クラス全員「はーい」
先生が黒板に書かれた『・パンケーキ店』の一番上の・を、チョークで大きく丸で囲む。
モノローグ【来月の文化祭に向けての準備が始まります】


○2年B組の教室 (9月中旬 放課後 上のシーンから3日後)
ポニーテールのクラスメイト女子が、紬に『買い物リスト』と書かれたメモ紙と、茶色い封筒を手渡す。
クラスメイト女子「はいっ、これ買い物リスト! お金はこの封筒に入っているからよろしくね」
紬「わかった。行ってきます!」
スクールバッグを肩にかけて、笑顔でクラスメイト女子の頼みを承る紬。
(『※買い物係』という文字から紬に向かって矢印が伸びている)

○廊下
文化祭の準備でワイワイと人で賑わっている廊下を、軽い足取りで生徒玄関へと向かう紬。
紬・心の声『この時期になると、自然と心がわくわくするなあ』
渚「紬っ」
人気のない生徒玄関前にたどり着いた紬の背後から、片手を挙げた渚が追い駆けてくる。
渚に気づいて振り返る紬。
紬「渚くん」
渚「俺も行くよ。荷物も多くなるだろうし、一人じゃ大変だろ」
紬「ありがとう。じゃあ、一緒に……」
莉紗「あっ、紬ーっ! 結城くんもっ」
横に並ぶ渚と紬が話している途中、向かい側から来た莉紗と奏多とばったり鉢合わせする。
紬「莉紗、羽瀬くん」(フラットな感じ。照れてはいない)
莉紗「もしかして、二人もこれから買い出し?」
紬「うん。莉紗たちも?」
莉紗「うん! 劇の衣装を作るから、これから奏多と一緒に手芸店に行くんだ~っ!」
奏多「僕たち、衣装係だからね」
莉紗「紬のクラスはパンケーキ店だっけ? 絶対奏多と行くから! お互い準備頑張ろうね!」
紬「うん!」
奏多「だね」
ニコニコと微笑み合う紬と莉紗と奏多の3人。
渚「紬ー、そろそろ行くぞー」
蚊帳の外にいる渚が、紬の方を向きながら靴箱の方へと向かう。
紬「あっ、うん! じゃあ莉紗、羽瀬くん。もう行くね!」
莉紗「いってらっしゃーい!」
奏多「気をつけてね」
紬を笑顔で見送る莉紗と奏多。
紬が駆け出して姿が見えなくなったところで、莉紗はふっと笑顔を消す。
そして、真顔になると、視線だけで紬を追い駆ける。
莉紗「……」


○大通り (夕方)

モノローグ【1時間後】
大通りの交差点前で、前かがみになって紙袋を2つ持つ疲れた顔をした紬と、その隣で両肩に紙袋の持ち手をかけ、両手にいくつもの紙袋を持つ涼しい顔の渚の姿が。
紬「買い出し、やっと終わった……」
渚「まさか、追加で買うものが増えるとはな」
紬「あはは、だねー……」
苦笑いをする紬。(その近くに、紬に買い物を頼んだポニーテールの女子が、『ごめ~ん!』と慌てた顔で電話をしているデフォルメ絵)
紬・心の声『それにしても、疲れたなぁ……。教室に戻ったら、作業の手伝いがあるけど大丈夫かな……?』
更に疲れを表情ににじませる紬。それに渚が気づく。
渚「紬、いったんあそこに寄らない?」
近くにあるお洒落なカフェを指差す渚。
紬「いいの? 寄り道しちゃって」
渚「大丈夫だろ。少しだけ休んで行こうよ」
紬「う、うん……」
紬・心の声『なんか、デートみたいだな……』
少しうつむいてはみかむ紬。


○カフェの店内

シンプルだけど、お洒落な内装のカフェ。客層のほとんどが他校の制服を着た高校生や大学生。少し混んでいる。
紬「うわあぁっ、おいしそう!」
(テーブルの上に乗っている、紬が頼んだドリンク(ホイップとベリーが乗ったフローズンドリンク)と、渚が頼んだアイスコーヒーとティラミスのアップ)。
紬、フローズンドリンクをストローで飲むと、頬に手を当てる。
渚「それはよかった」
クスッと微笑む渚。
そのとき、紬と渚がいるテーブルの近くに、ピンクベージュ色の髪をツインテールにした美少女が現れる。
彼女は渚に気づいたように目を見開いて、確認するように声をかける。
美少女「渚……?」
渚も美少女に気づいて目を見開く。
渚「えっ? ……紫倉?」
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