孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
1、空と飛行機に魅せられて


 セルリアンブルーの空に浮かぶ綿菓子のような雲。

 そこに飛び立っていった一機の旅客機を見上げ、すぐに手元のポストカードに目に映る空の姿を鉛筆で描いていく。

 十月 の快晴日。

 羽田空港のB滑走路に沿うように作られている公園の片隅で、私、三森(みもり)真白(ましろ)は大好きな創作活動に没頭中。

 毎朝出勤前にここに立ち寄り、自分で決めた三十分間だけ絵を描いている。私にとって心が整う、大切な時間なのだ。


「あっ、いけない。そろそろ行かなきゃ」


 うっかり冒頭しすぎて時間を忘れそうになることもしばしば。

 慌てて片付けをし、停めておいた自転車にまたがった。

 公園を後にして向かう先は、東京国際空港──日本の玄関口である、羽田空港だ。

 私は羽田空港でグランドスタッフとして勤務している。

 高校を卒業してから専門学校に通い、グランドスタッフとして勤められる空港関連会社に就職した。二十一歳の時に就職し、今年で早五年になる。

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