クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
楽しい一日だったな。
ふと、心の中でそんな感想が生まれる。
基本的にひとりを好み、ひとりの時間を大切にしてきた。
そんな自分が、他人と、まして女性と時間を共有して楽しかったなんて感じるのは初めてのこと。
一日があっという間で、もう終わってしまったのかなんて思う。
手を繋いだ時の初々しさ、少しずつ軽快になってきた言葉のキャッチボール。
心を許してきてくれているような表情も時折見つけられた。
その中で、偽装夫婦を引き受けてくれて、改めて気持ちを聞くこともできた。
絵のことをネタに関係を強引に迫ったことは謝りたかったし、真白が脅されていると感じたという正直な気持ちも吐き出してくれた。
それでも、卑怯な手を使った俺に彼女は「ありがとう」と言った。そんな姿に胸が締め付けられたのは言うまでもない。
「見てきました! なんか、豪華すぎて……」
リビングに舞い戻った真白は、弱ったような苦笑いを浮かべる。
「良く似合っているから問題ない」
「そうですか? それならいいんですが……なくさないように気をつけないと」
ジュエリーケースを手に取った姿を目にしながら、ふと、この関係はいつ、どんな形で終わるのだろうかと考えていた。
偽装夫婦。お互いに役目を果たせば自然と解散になるのだろうか。
そうなった時、少しずつ築き始めた真白との今の関係もなくなるのだと思うと、無性に空虚な感情が渦巻いた。