孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
5、夫婦らしいこと
翌日。
今日は遅番出勤で午後から仕事へ。ゲート業務担当で、ちょうど遥さんが操縦桿を握る十六時に十分発ニューヨーク行の搭乗案内に控えていた。
特に大きなトラブルもなく、順調に旅客が手続きを済ませていく中、遥さん含む機長二名と副操縦士、その後ろに客室乗務員の団体がキャリーバッグを引いて現れた。
搭乗していく姿に視線を奪われる。
今までそこまで熱心に注目して見つめたりはしなかったけれど、特別な関係性となった今、やはり遥さんに注目してしまう。
百八十センチ以上ある長身にパイロットの制服は周囲の視線を自然と集める。
さらりと流れる黒髪、前を見据える切れ長の目。
見つめていると、その視線が私を捕らえる。目が合った瞬間、どきんと鼓動が跳ねて慌てて頭を下げた。
こうして空港内で業務中に見かけると、今の関係がやっぱり信じられない。
ひとつ屋根の下で暮らし、同じベッドで眠る。
昨日は手を繋いで街を歩いたし、このネックレスを買ってもらって……。
制服の首元にあるダイヤに、確かめるようにそっと触れてみる。
そこにはちゃんと昨日つけてもらったネックレスが存在する。
通り過ぎていく遥さんに視線を送っていたところ、視界には難波さんの姿が映り込む。
目が合うと、彼女はなぜかわずかに冷笑を見せ遥さんの後に続いていった。